最近、井上さんが出席する企画会議で、若手チームが不動産検索サイト「ホームズ」の新料金プランを提案した。

「僕らは3カ月かけて600社からアンケートを集めてきました。まずそのデータを見てください。アンケートによれば、こういうニーズが強いことがわかりました。そこで、この新プランを……」

質疑のすえ、井上さんはその案を却下した。理由はさまざまだが「結論から入らず、話がわかりにくかった」こともマイナスに働いた。

彼らはいったい、どうすればよかったのか。

「まず目的を明確にすることです。たとえば売り上げなのか、顧客満足度なのか。制約条件があるとすれば、それは何か。また、消費者調査などのリサーチをもとに新企画を提案するわけですが、一通りではなくAプラン、Bプラン、Cプランと複数案を提示すべきです。そして最後に『このなかでも自分はAプランを推します。なぜなら、こういう根拠があるからです』と自分の意思を出してほしい。ここまで奇麗にやられたら、『仕事できるねえ』と褒めてやりたいですね(笑)」

ところで、企画を提案するときには、必ずしも会議の場を与えられるとは限らない。エレベーターに同乗した機会をつかまえて、上司を説得する場面もあるだろう。

「要点と結論を簡潔に30秒とか1分で語ることは大事だと思います」と井上さんはいう。そのためには、常に論点の整理をしておくこと。西任さんがいうように、自分を客観視する視点が役立つだろう。

【○】現状、トラブルが頻発しています。この企画によって未来はこう変わります。
【×】ご説明申し上げます。まず、この企画の趣旨ですが……

スピーチトレーナー
西任暁子
U.B.U.speech consulting代表。大阪生まれ、福岡育ち。慶應義塾大学総合政策学部在学中にFMラジオのDJとしてデビュー。著書に『「ひらがな」で話す技術』。
 
ネクスト社長
井上高志
1968年、横浜生まれ。青山学院大学経済学部卒業後、リクルートコスモスに入社。97年にネクスト設立、現職。同社は2006年、東証マザーズ上場(現在は東証1部)。
(永井 浩、ミヤジシンゴ=撮影)
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