声の「信頼度を勝ち取る」ピッチ

マイアミ大学の政治学者ケイシー・ クロフスタッド氏らは、「声に含まれるシグナルを分析すると、どの候補者が選ばれるかが部分的ながら説明できるようになる」としている。

氏らの実験では、架空の選挙で誰に投票したくなるか調査を行った。被験者は男性37名、女性46名の大学生で、候補者役はあわせて4人。男女各1人ずつ声が高い人と低い人を含むようになっており、それぞれが「私に投票を」と語りかけ、有権者が判断した。また、通りすがりの成人男性105人、女性105人に対しても聞き取り調査を行っている。

その結果、男女とも声が低い人のほうが、得票率が20%高い結果となった。また、女性候補同士の比較では、声が低い候補者が能力や強さで勝るイメージで、より信頼がおける印象を与えたという。一方で、男性候補の比較ではさほど違いは現れなかったが、それでも声の低い候補が好まれる結果になり、「声のピッチは、女性候補者のほうがより当落結果に影響があるようだ」としている。

また米デューク大学の生物学科の研究者らが行った実験では、「11月は私に1票を」と呼びかける声を録音し、さまざまなトーンにデジタル調節して被験者に聞かせ、その声からどの候補者に投票するかを聞き、声に表れた「能力・適性」「信頼性」などの特徴も評価した。その結果、「候補者選びは、印象に左右されることが多い」「声の印象は、有権者が考慮するポイントのひとつとなる可能性がある」としている。

選挙での候補者の印象を決めるひとつの要因が“声”であり、有権者はその声に信頼度や能力を見出している。私たちの日常でも生物学的にみて、低い声にはより信頼をおく傾向がみられるようだ。

さて、トレジャー氏は、話をする前のエクササイズとして、両手をあげて深く息を吸って「あー」と吐き出すこと、それから唇を軽く合わせてブルルルルとしたり、バババババと言ったり、ららら、ルルルと舌を震わせるなどの運動を行うことを勧めている。発声をよくするだけで、選挙のように信頼を勝ち取る可能性が高まるという。

こうした訓練も含め、先に示した声を上手に使いこなすことで、人前でのプレゼンから選挙まで、あらゆる“説得”の成果が高まるのである。

[脚注・参考資料]
AFP BB NEWS 2012年03月15 12:39 「政治家は「低い声」のほうが有利、当選確率高いと米研究者」
http://www.afpbb.com/articles/-/2865174

Casey A. Klofstad, Rindy C. Anderson, and Susan Peters, like a winner: voice pitch influences perception of leadership capacity in both men and women, 「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」, March, 2012

Julian Treasure, How to speak so that people want to listen, TED Global 2013 Filmed Feb 2013
http://www.ted.com/talks/julian_treasure_how_to_speak_so_that_people_want_to_listen

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