【田原】お互いが不幸って、どういうこと?
【冨山】お金で解決できないので、裁判所は職場復帰させなさいという判決を出します。ただ、これは強制執行できないので、結局は自宅待機で、給料だけが毎月振り込まれるケースが多くなります。人が余っていて仕事がないときならいざしらず、いまのように仕事がたくさんあるときに座敷牢状態になって、はたして幸せなのか。いまの解雇法制は、働き手にとってもナンセンスだと思います。
【田原】解雇法制はアベノミクスでも論点になっていますね。
【冨山】金銭による解雇自由化というからおかしな話になっていますが、要は実効的な紛争解決手段を提供しようということ。そうしないと、いい意味での流動性が高まらないでしょう。
【田原】最後に、人手不足解消のために、移民を受け入れようという議論もあります。これはどう思いますか。
【冨山】非常に難しい問題ですが、チープレイバーとして外国人労働者を入れるのは反対です。安く雇える労働力が入ってくると、企業が生産性を上げる動機が薄れて、むしろブラックな環境が拡大する方向にいってしまう。入れるなら、ディーセントレイバー(高度人材の外国人)に限り、日本人と変わらない賃金で雇うようにしっかり監督すべきでしょう。
【田原】わかりました。今日はいろいろと勉強になりました。どうもありがとうございました。
1960年生まれ。筑波大学附属駒場高校卒。東京大学法学部在学中に司法試験に合格、85年ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。86年コーポレートディレクション社設立に参画後、代表取締役社長。90年スタンフォード大学経営学修士取得。2003年産業再生機構の設立に参画し、専務兼COOを務め、41社の支援決定を行う。07年経営共創基盤(IGPI)を設立し、CEOに。09年9月からJALの再生を担い、12年12月から現職に復帰。13年経済同友会副代表幹事として活躍。『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)など著書が多数ある。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。