なぜ発症率、重症化率が下がるのか
ご存知の人も多いと思うが、インフルエンザにはA、B、Cの3つの型があり、そのうち世界的な流行がみられるのがA型とB型だ。インフルエンザワクチンのウイルス株の内容は、毎年WHO(世界保健機関)が決めた推奨株の情報をもとに、日本国内の専門家がその年の流行を予測して決めている。現在の予防注射は、2009年に新型インフルエンザとして猛威をふるった「A/H1N12009」と香港A型、B型の3種類を混ぜたワクチンだ。ちなみに、H1N12009によるA型インフルエンザは昨年も大流行したが、現在では新型とは呼ばれていない。
ウイルスが変化するのは、こうした予防注射や抗ウイルス薬に撃退されずに人間の体の中で増殖して生き延びるため。予防注射や抗ウイルス薬でウイルスを撲滅しようとする人間とそれでも何とか生き延びようとするウイルスとのイタチごっこが続いているわけだ。今シーズンのインフルエンザワクチンのウイルス株と流行するウイルスに大きな違いがなければ、つまり予測がはずれなければ、それだけ発症率、重症化率も下がると考えられ、予防注射を打つ意味も大きくなる。
ワクチンの主な副反応は、注射したところの赤み、腫れ、痛みが最も多く10~20%、発熱、寒気、だるさといった症状も5~10%の人に起こる。まれに、アナフィラキシー・ショック、発疹、じんましんといったアレルギー反応が出る場合もあるので要注意だ。
インフルエンザの予防注射を受けるかどうかは接種効果の数字をどう解釈するか、そして、年齢、家族構成、職業、アレルギー体質かによっても左右されそうだ。インフルエンザによって乳幼児は脳炎・脳症、65歳以上の人は肺炎になるリスクが高いので、予防接種でできるだけ発症・重症化を抑えられるならそれに越したことはない。肺炎を予防する23価肺炎球菌ワクチンがあるが、インフルエンザワクチンを接種しただけでも肺炎の重症化と死亡率を低下させるとの報告が複数出ている。例えば、65歳以上のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を対象にした研究では、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンと併用したときはもちろん、インフルエンザの予防注射を接種しただけでも、何もしなかったときより入院のリスクを半分以下、死亡リスクは5分の1に抑えられた。