それは、難しいことでもある。私の個人的な資質もそうだが、日本という国にとっての課題とも関連している。日本発の、「広げるに値するアイデア」は何か? 日本が世界の中で輝くには、どうすればいいか。TEDは、厳しい基準を突きつける。
国内マーケットで満足していてはいけない。グローバルな文脈で、勝負しなければならない。そのことを、理屈だけでなく体にしみこませるために、TEDに参加して「打ちのめされる」ことが必要だと考えている。
私は、決して楽観はしていない。しかし、必ず道はあるはずだと確信している。
ところで、TEDは今回大きな変革があった。昨年まで、本会議はカリフォルニア州のロングビーチで開かれていたのが、今年から、カナダのバンクーバーに移転したのだ。
インターネットという新しい技術、文明の中心であるカリフォルニアから、少しヨーロッパ的な香りがする北の街、バンクーバーへ。この微妙な距離感は、TEDの運営者による一つの工夫だと言える。
グローバルな文脈に適応するためには、文明の中心に、コバンザメのようにひっついている必要はない。むしろ、少し離れたところで、自分の存在価値を熟成させたほうがよい場合もある。
文明の中心を無視するわけでもなく、取り込まれてしまうのでもない。TEDの新しい立ち位置は、グローバルな文脈に挑む日本人にとっても、大いに参考になると思う。