――安倍政権が進める規制緩和の方針に対して、公取も全面的にバックアップする姿勢を明らかにしています。
【杉本】いわゆる成長産業といわれる分野について、競争条件を確保しながら、より成長を促す方向に持っていこうとしています。具体的には、医療、介護、子育て、健康産業、教育、農業などを中心に、競争環境を整備して参入障壁を下げ、新規参入が容易になるようにしようという狙いがあります。これは一例ですが、今、農協による集荷手数料の談合に関する調査に入っています。新規参入が妨げられる状態が続いている限り、その分野は成長していきませんよということを我々としては明確にしたいと思っています。
――消費税率が4月から3%上がり、8%になりました。とくに、中小企業の価格転嫁に問題は起きていませんか。
【杉本】経営が厳しい中小企業にとって、増税分を価格に上乗せできないと経営はますます苦しくなってしまいます。そこで、消費増税に合わせて例外的に認めたのが転嫁・表示カルテルであり、合計291件の届け出がありました。実際に上乗せできているかを監視する専門職員(転嫁Gメン)も六百数十人に増員しました。転嫁拒否が疑われる企業への立ち入り検査も増やして、立場の弱い中小企業が価格転嫁を円滑に進められるよう厳しく指導している。先に、JR東日本ステーションリテイリングに勧告を出し、社名を公表しましたが、これはいわゆる買いたたきが大規模で、影響が大きかったからです。
1950年、兵庫県姫路市生まれ。69年県立姫路西高等学校卒。74年東京大学法学部を卒業し、大蔵省(現財務省)に入省94年主計局主計官98年大臣官房調査企画課長2000年内閣総理大臣秘書官事務取扱、06年大臣官房長、07年主計局長08年財務事務次官10年東京大学公共政策大学院教授11年みずほ総合研究所理事長などを経て、13年3月から現職。