1956年11月、大阪府吹田市で生まれる。父は理科と技術の教師で弟が一人。小学校時代からラジオの組み立てやアマチュア無線が好きで、中学で無線部をつくり、部長になる。大阪大学では基礎工学部の生物工学科。工学、理学、医学の学際領域に関する学科だ。79年4月に入社し、研修と実習の後、翌年1月に無線研究所に配属。卒業研究のテーマだった音声認識を担当する。

転機は、やはりDVDの開発時代。研究から実用化の世界へと移っただけではない。大きな解もみつけた。

「技術というのはあくまで部分で、部分を集めないと商品にならない。商品をつくっても、大きく育って市場を生まなければ事業にならない。コストを下げて、お客さんが使いやすいように絶えず改良していくことで、初めて稼ぎが生まれる」

2012年6月、社長に就任すると、自然に言葉が出た。「お客さま価値につながっていない仕事は、いくら一生懸命でも無駄で、無駄な仕事は会社に要らない」。お客が求めていることに向き合い、その実現に役立ってこそ、稼ぎは実現する。

進めている会社の構造改革は、DVD開発から得た確信の実践。無論、創業者の松下幸之助が言った「ものをつくる前に人をつくる」も同感で、「不憤不啓」の厳しさも忘れない。

(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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