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「勝間本」の基本構造

時折、勝間さんはマスコミ関係者や有名人とイチャつく、“業界人っぽい”エピソードを入れる。勝間さんはこの何気ないエピソードを通して、成功者、人気者「勝間和代」を演出している。これはかつて林真理子さんがエッセイでよく用いた手法だ。非常に効果的で、私もこの手法を見習おうかと思ったほどだ。

しかし、会社の上司がカツマーだった場合、こう静観しているわけにはいかない。なにしろ相手は「断る力」で、こちらの事情などお構いなしに暴走しはじめる。

動物は同じ空間に天敵がいると「ファイトorフライト」のどちらかを選ぶ。つまり、戦うか逃げるのだ。これを踏まえるなら、基本的には直接のやり取りを避けつつ、相手が弱っているときを見つけて近づくのがいいだろう。

もしカツマーと向き合う羽目になったら、相手の短所を褒めるのが効果的だ。なにを頼んでも「断る」のであれば、「(カツマー)さんはいつも嫌な顔をせず私を助けてくれますね」と、少々強引でも誘導していく。プライドの高さゆえに「断っている」場合も多いので、押すボタンさえ間違えなければ簡単に操縦できるはずだ。

ただし、間違ってもカツマーの派閥に入ったり、自分自身がカツマーになってはいけない。

社会心理学の「PM理論」は、リーダーシップはパフォーマンス(売り上げなどの目標達成)能力とメンテナンス(人間関係への配慮)能力で構成される。例えば、カルロス・ゴーンなど人望が厚いリーダーは、パフォーマンス志向は強いが、メンテナンスは個々を信頼し、任せる傾向にある。「僕はこう思うだけで、売り上げさえ伸ばしてくれれば君の考えた通りにやればいい」というわけだ。しかしカツマーは、パフォーマンスにもメンテナンスにも厳しくなる。「売り上げを上げよう。問題の原因は君自身にあるのだから、私のようにしなさい」となる。これでは、真のリーダーにはなれない。出世も自意識とは裏腹に遅れていく。

ただし、「情熱大陸」には出られるかもしれない。どちらを選ぶか、この判断が難しい。

※すべて雑誌掲載当時

(大高志帆=構成 岡本凛=撮影)