重要なのは“キョウイク”と“キョウヨウ”
「高齢化社会とは高齢者をうまく活用する社会のことだと思います。そして、高齢者にとって重要なのは“キョウイク”と“キョウヨウ”なんです。つまり、今日行くところがあり、今日の用事があることです」
こう強調する上田会長が高齢社を設立したのは2000年1月1日。区切りのいい日にしたいということで、この日を選んだそうだが、実はそれより7年前にこのような会社を設立しようと考えていた。しかし、当時の上田会長は東京ガスからガスターの専務として出向し、再建の真っ最中。とても会社を興す余裕がなかった。
そして、再建が軌道に乗ると、今度はガスターの協力会社だった東京器工が経営不振に陥り、そこの社長に就任して経営を見てほしいと頼まれたのである。2年後、当初の使命であった単年度黒字を達成し、ようやく新会社について具体的に考えることができた。
「定年をした人の話を聞くと、最初のうちは旅行をして楽しめるが、そのうち家でゴロゴロするようになって、奥さんに煙たがられて居心地が悪くなるというんですね。定年退職者をうまく活用できる会社をつくれば、本人のためにもいいし、奥さんにも感謝されるので、うまくいくと思いました」と上田会長は話す。
いまでは登録社員とその夫人双方から「いい会社をつくってくれた」と感謝され、昨年には中小企業基盤整備機構の「日本ベンチャーアワード」で高齢者雇用支援特別賞を受賞し、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。
また、上田会長は高齢社のほかに、家事代行事業を行う「かじワン」という会社を12年4月に設立。これは女性版高齢社のような存在で、現在220人が登録している。「今後は高齢者の生活を豊かにするイベント事業や農業ビジネスを手がけてみたい」
76歳の上田会長は難病のパーキンソン病と闘いながら、1人でも多くの高齢者に働く場所と生き甲斐を提供するためにこれからも尽力していくつもりだ。