転職を決意してからの動きは早かった。いくつかの人材紹介会社に連絡をすると、1日3件のペースでオファーが届いた。また興味のある会社には、こちらからもアプローチ。その結果、検討のテーブルには、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、楽天、そして実際に入社した部品商社の5社が残った。
外資系の3社は、早めに候補から外した。条件は魅力だったものの、「プレミアリーグからセリエAに移籍するようなもの」(金田氏)で、結局は前職の繰り返しに思えたからだ。では残った2社から部品商社を選んだのはなぜか。
「前の会社では、他社にヘッドハンティングされて転職する中堅エンジニアが大勢いました。彼らが転職先で期待されていたのは、前の会社の技術情報です。しかし技術情報はすぐに古くなるため、数年するとほとんどの人が消えていきました。そうした転職は、自分の価値を消費するだけです。私は転職を機に、自分の付加価値を高めたかった。そう考えると、これまでの延長線上で働くより、全く畑違いの分野を経験して幅を広げていくほうがいい。そこでベタな製造業の世界に飛び込んだのです」(金田氏)
転職先では経営企画室副ゼネラルマネジャーに就任。製造業におけるマーケティング改革にチャレンジしている。
じつは今回の転職にあたり、金田氏の給料は約3割下がった。ただ、実力主義の会社なので、実績を積んでいけば前職の年収を上回ることは難しくない。金田氏もそれを織り込み済みで、「給与が下がった分は、新しいことを経験させてもらう勉強代。3年でキャッチアップして、元の給料を上回りたい」と意欲的だ。