相手の立場を考えることは、スピーチの場面でも求められます。私は、スピーチのたびに「こうしたら、もう少しわかりやすかったかも」「話し方が速くなってしまったな」と反省します。聞き手の興味、関心によって、話し方や内容を微調整し、カスタマイズしていくことが求められます。
2つ目は、質問すること。そして、質問できるような組織をつくることです。
弊社は12年3月に経営体制を刷新し、荒川詔四・前社長が会長、私が代表取締役CEO、西海和久が代表取締役COOという体制になりました。社長という仕事が、経営戦略を担うCEOと事業全般を担うCOOの2つに分かれたのです。さらに会長が取締役会・株主総会議長を務めます。
取締役会は国会みたいなもので、そこの議長は中立であるべきです。だから当社会長には代表権がありません。一方、私をはじめとする執行部はいわば内閣、監査が司法のような存在です。言い換えれば、「三権分立」。チェック・アンド・バランスがよく機能する仕組みに変えたのです。
これによって起きた最大の変化は、説明と質問が常について回るようになったことです。国会の場面のように、誰かが話さなければ会は進みませんし、質問しなければ議論は深まりません。断トツ企業という目標に向かって、互いの役割が明確になりました。
3つ目は、内向きのロジックを使わないことです。
弊社では、社外取締役もあえて主力事業であるタイヤとは分野の異なる方々や、外国人の方々を迎え入れています。すると、経営に関わる事項を説明しても、「今、言われたことがわかりません」「それはどういう意味ですか」といった質問が相次ぎます。普段は、タイヤ業界の内輪で物事が進められていますから、自分たちのロジックや言葉で簡単に通じます。しかし、一歩外に出れば、全く伝わらない。内向きのロジックに閉じ籠もってしまっては、社外取締役はもちろん、お客様の声をも聞き逃してしまう可能性があるのです。