現場との対話が、企業の安全性を高める
話すことと聞くことはセットです。リーダーならば、さまざまな立場の人の意見を吸い上げなければなりません。そうすることで、新たなものが見えてきます。
今回、CEOとしての経営方針を発表する前に、私が作成した原案について米国側の経営チームからも数多くの意見をもらいました。彼らは、私がアメリカ駐在時代から経営改革を一緒に進めてきた仲間で、英語版作成のアドバイスをもらうだけでなく、どういう表現がいいのか、何を伝えるのかといった点についても何度も議論を重ねてきました。
経営陣自ら各事業所を回って、現場の声をきめ細かく拾うことも大切です。特にコンプライアンスや安全の問題は、事業の基本中の基本で、こういった問題に的確に対処していくためには、対話が欠かせません。米国では日本より一足先に会長・CEO・COO体制を始めていて、すでに経営陣の意思疎通の成果が出ています。また、各事業所を回って現地従業員と胸襟を開いて対話するタウンホールミーティングを開催しています。
これが機能するのも、はっきり物を言い合える文化があるからこそだと思います。これをそのまま日本に持ち込んでも、なかなかうまくいきません。現在、日本で機能する方法を練っているところです。
私は新入社員や若手にも積極的に発言してもらいたいと考えています。今年は会場の都合で叶わなかったのですが、入社式に私自らが会場を歩き回りながらプレゼンテーションし、「質問はありますか。ないのなら私から聞きます」と会場の新入社員を指名するつもりでした。
もちろん、米国とはメンタリティがかなり違います。日本やアジア諸国では、名指しても、なかなか答えてくれないかもしれません。文化的な側面もありますが、弊社のようなグローバル企業の場合、そんな言い訳は通用しません。当事者意識を持って説明と質問を尽くすことこそ、組織が前進していく原動力なのです。
1952年、東京都出身。76年一橋大学経済学部卒業。シカゴ大学経営大学院修了。76年ブリヂストン入社後、2006年執行役員、08年取締役常務執行役員、10年CRO・CHRO・管理管掌を経て、12年3月より現職。