以前、私が勤務していた外資系企業で一緒に働いていたアメリカ人がいた。彼は非常に優秀な成績を挙げている人物だったが、金曜日の夜は必ず5時きっかりに会社を出ていった。
「今夜は何の用があるんだ?」
「これからワイフとディナーだよ」
こちらは朝から晩まで死ぬ思いで仕事を片付けているのにふざけるな、と最初は思ったが、しばらく見ているとどうもそれは違うと感じ始めた。
まず、アメリカ人の彼は妻とのディナーの時間を確保するために、仕事の進め方をかなり工夫していた。そして、妻と楽しい時間を過ごして良好な夫婦関係を築くだけでなく、妻から紹介してもらった人脈で仕事の幅を広げていたのだ。
リターンを考慮せず、バケツに溢れるほどの小石を詰め込んで頑張った気になっていたかつての私と、リターンを意識して大きな石から先にスケジューリングしていた彼のスタイルのどちらがよいか、答えは明らかだろう。
(※図版は、取材をもとに編集部作成。)
1932年、米国ユタ州生まれ。作家、経営コンサルタント。世界78カ国でリーダーシップやマネジメント教育などを手がけるフランクリン・コヴィー・グループの創始者の1人。著書は『7つの習慣』『第3の案』など。
■フランクリン・コヴィー キングベアー出版
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