医療保険では70~74歳の自己負担額割合について、14年4月以降、70歳になる人から5年かけて現在の1割から2割へ引き上げる見通しになった。しかし、もともと08年から実施するはずだったもので、遅ればせながら本来の制度に戻すだけ。投入していた2000億円近い国の負担が軽減されるとはいえ、社会保障にかかわる国の財政負担額である29兆4000億円から見ると微々たる額にすぎない。都道府県ごとの全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率は健康保険法で上限が12%に定められているが、鈴木さんは引き上げが必至と見ている。
また、介護保険では「要支援」向けのサービスを介護保険から各市町村が独自に手がける事業に移し、現役並みの所得のある高齢者には自己負担額の引き上げを行う方向で動き始めている。しかし、それでも認知症などの病気に罹りやすい後期高齢者の急増にともなって財源の逼迫は避けられず、協会けんぽベースで見た1.55%の保険料率に関しても鈴木さんは「4倍前後のアップが必要でしょう」と指摘する。
こうしたなかで密かに求められ始めているのが「自助努力」だ。社会保障制度に詳しい社会保険労務士でブレインコンサルティングオフィス代表取締役の北村庄吾さんは、「12年1月から新たに介護医療保険料控除が新設されました。本来、財政が苦しい政府は税収を少なくするような制度は設けたくないはず。それをあえて行ったのは、国が面倒を見る分を減らすから、自分たちでカバーしていってほしいという意思表示なのでしょう」という。