部門を超えた人事は「1つの部門で専門性を深めさせる」との理由で、いつのまにかやめていた。それでは、例えば支店で個人営業を続けた人には、企業営業は別世界になってしまう。でも、支店長になれば、営業課長までとは全く違い、支店長にしかできない仕事、入れない場所がある。代表例が地域の企業社会。自分は、たまたま双方を経験していたから、京都支店長も苦ではなかった。

今春、部店長らの交流も始めた。

「そういう経験を積ませていないから、そういう仕事はできない」ということは、もう、なくす。これも、自然な対応の1つだ。

いま、若者が内向きとなり、グローバル企業でも海外勤務を嫌がる、という。社内で調べたら、全く違った。「海外へ出たい」との声が、すごく多い。そこで、海外留学制度を改めた。入社して3年が過ぎるとき、全部門の同期生の中で成績がよかった上位1割、同期生が300人なら30人に、1年間を与えて「遊学」させる。大学院で学位を取る留学とは違い、いきたい国を選ばせ、何でも吸収させてくる。義務は月1回のリポートだけ。終わったら、いく前にいた部門へ戻す。海外へいったから海外勤務、などとはしない。年末の異動で、第一陣を決める。

これも、若手が希望し、こちらも出したいと思うから、自然に決まった。多様な経験を得て、視野を広げた社員が増えれば、野村の企業文化のどこは守り、どこは変えるべきか、見抜く眼も肥える。きっと、自然にそうなる、と思う。

(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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