全てはお客様の為貫き通した自然体
いま思えば、2度目の京都へいって、よかった。どの職場でも言えるが、お客の立場になって考え、無理せずに自然体で実行していくことが、大切だ。京都支店長時代が、それを確信させてくれた。
「安時而処順、哀楽不能入也」(時に安んじて順に処れば、哀楽入る能わず)――時の巡り合わせに平安な気持ちで臨み、自然の流れに応じていれば、悲しみも喜びもない、との意味だ。中国の古典『荘子』にある言葉で、力まず、構えず、自然な流れに応じた生き方を説く。お客のためのみを考え、最善と思える対応を自然体でしていく永井流は、この教えと重なる。
自然体は昨年、野村グループのトップに立っても、変わらない。就任1年目から役員数を減らし、部門間の交流人事に着手した。トップになって、力んだわけではない。「安時而処順」の心のまま、「あれはおかしい」と思っていたことを、淡々と変えているだけだ。
経営破たんした米リーマン・ブラザーズの欧州アジア部門を買い取って併合したため、1つの部門で国内外双方に役員を置く部署が増えた。複数の本部に分かれ、それぞれに役員がいる部門もあり、役員総数は100人を超えていた。
自分にも経験があるが、1つの業務を単独で担当すれば、いいことも悪いことも自分に跳ね返ってくるから、緊張が続く。だが、2人で担当すると、途端に気が楽になり、悪いことが起きても競争相手にやられても、「まあ、俺だけのせいではないし」と緩みがちだ。それが、いつの間にか、「俺のせいではない」にまでなっていく。
それは、おかしい。そこで、1つの業務はなるべく1人の役員が担当するようにして、今春の異動で30人余りを減らした。