日本では野村、みずほFGで損失発生か
3月29日、わが国の野村ホールディングス(野村)と、スイスの金融大手クレディ・スイスは米国の顧客との取引に起因する巨額の損失計上の可能性があると発表した。その顧客とは、投資会社のアルケゴス・キャピタル・マネジメント(アルケゴス)であることが判明した。
報道によると、損失額は野村が約20億ドル(約2200億円)、クレディ・スイスが30億~40億ドル(約3300億~4400億円)とみられるものの、現在のところ損失額は確定していない。この2社以外にも、みずほフィナンシャルグループの米子会社が1億ドル(100億円)程度の損失を計上する可能性があると報じられており、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなどの金融機関でも損失が発生している模様だ。
“アルケゴス問題=アルケゴスに起因する大手金融機関の巨額損失発生”に関して、どのような取引が行われていたか、なぜそれが損失を発生させたかを確認することが重要だ。
行きすぎたリスクテイクが放置されている
重要なポイントは、同社が過剰なリスクテイクをしていたとみられることだ。アルケゴスは、ある意味では規制の甘さを突いて、積極的にレバレッジをかけてリスクテイクを重ねた。同社と取引を行った金融機関は、そのリスクを十分に評価できていなかったといえるかもしれない。同社が保有していた株価が想定外の方向に動いた結果、アルケゴスは巨額の損失を抱え、資金繰りに行き詰まったとみられる。
アルケゴス問題の影響は軽視できない。規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する。過去、資産価格が過熱した結果として、投資ファンドが損失を抱えて事業の運営に行き詰まり、結果として世界的な金融システムの不安定性が高まったことは多い。アルケゴス問題には、そうしたケースと重なる部分があるように見える。