余計な情報を入れないと説明できないものは、そもそも内容自体が十分練られていないことが多い。よい内容であれば、A4・1枚どころか一言(5W1H)で簡潔に表現できるはずだ。どうしても資料が長くなってしまうなら、中身を練り直すところからやり直したほうがいい。
僕にも経験があるのだが、企画を考えてそれを文章に落とし込んでいくと、その過程でどんどん内容にのめり込んでいって、「これってすごくいい提案なんじゃないか」と企画に愛情を抱き、その勢いでプレゼンに臨んでしまうことがある。「こんなに素敵だから通って当然でしょう!」と思っているかもしれないが、これでは聞き手との温度差が生まれ、何とも痛い空気が流れてしまう。
最近、故スティーブ・ジョブズをまねたプレゼンをする人をよく見かけるが、これも要注意だ。確かにジョブズのプレゼンは聴衆を引きつけるが、あれはジョブズというカリスマ経営者だから成功していた。ジョブズが話すというだけで受け手は聞きたいという気持ちになる。しかし普通のビジネスマンが形だけジョブズを真似ても逆効果にしかならない。しつこいようだが、送り手の精神状態と受け手の精神状態は異なるのが大前提だ。独りよがりの言葉で書かれた文章を読みたいと思う人はいないだろう。
読んでもらうには、まず相手に合わせること。どんな人に対しても同じ言葉、同じ文体を使ってはいないか? 自分にとっては日常的によく使う言葉でも、相手には馴染みのないものかもしれない。業界や企業によって使う用語が異なるなら、それも事前にチェックして書き換えるべきだ。企画を通したい相手が新任部長でとにかく変革したいという意欲が高い人なのか、保守的でできるだけ現状を変えたくないと思っている古株部長なのかによって、話の流れも変わってくる。