「内容はいいのになぜか相手に伝わらない、企画が通らない」。ちょっと待って! その思い込みを捨てることから始めよう。「いいものと通るものは違う」と断言し、通すコツを教えるのは「本屋大賞」の仕掛け人・博報堂ケトル代表の嶋 浩一郎氏だ。

落とす定石は「頷きのカスケード」

中身はいいのにこの書き方じゃ通らない、そもそも最後まで読んですらもらえない……。そう感じる文章や企画書をこれまでたくさん目にしてきた。一番よく見るのが、「説得したい」という思いが強すぎるあまり、全体像が見えなくなっているパターン。実はこれ、中身に自信がある人ほど陥りやすい罠だ。

文章を書く側と読む側が同じ精神状態、同じ状況に置かれているということはまずありえない。説得したいことが見え見えで、提案内容を一方的に押しつけるような文章が並んでいたら、それだけで引いてしまうし、続きを読みたくなくなるだろう。仕事にかける熱意や意気込みは立派でも、それが裏目に出てしまっている残念なパターンだ。

同じように、やたらと細かい話から始めるのもNG。これは仕事ができる優秀な人がやってしまいがちだ。細かい数字や統計データを持ち出して論理的に説明しようとしているのだろうが、何を伝えたいのかが伝わらず、やはり読む気がしなくなってしまう。

どんなにいい提案でも、相手を説得するための文句ばかり並んでいたり、細かい話ばかりで何が本題かわからない文章だったりすると、読み手の頭の中は「?」でいっぱいになる。

「考えを押しつけられているんじゃないか?」「結局、何が言いたいのだろう?」。せっかく提案の機会をもらえたのに、内容のよし悪しを検討する前の段階で読み手の思考をストップさせてしまうのだ。こうなると、どんなに内容が練られていてもそこから先に進むことは難しいだろう。