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長時間労働はなぜ起こるのか?

一方、非自発的長時間労働の要因としては、まず市場の失敗があります。労働市場において使用者側の交渉力が強かったり広義の転職コストが大きければ、長時間労働からの脱出は困難です。

第2の非自発的要因には、職務の不明確さと企業内コーディネーションによる負担があります。日本では欧米に比べ職務範囲が明確でないため、「自分の仕事が終わったから退社」という行動が取りにくくなっています。また「頻繁で長い会議」が象徴するように、情報の共有や伝達など、企業内コーディネーションに要する時間が長時間労働として顕在化している面もあります。

第3の非自発的要因は、雇用調整のバッファー確保です。不況期に人員調整を避けるためには、労働時間に「削りしろ」のある状態、つまり平時でも長時間労働が常態化する必要があるということです。

そして第4の非自発的要因が、自発的長時間労働者からの負の外部効果です。たとえば、上司が長時間労働者の場合、部下は残業に付き合わざるをえなくなります。