ライバル同士がタッグを組んだ取り組み

9月12日、JOGMECは公募結果を発表した。採択されたのは、エネルギー系エンジニアリング会社の双璧、日揮と千代田化工建設の「共同提案」だった。両社は、ともに横浜市西区の「みなとみらい」に本社を置いている。海外の石油・天然ガスはもちろん、エネルギー資源開発の最前線を切り拓いてきたエンジニアリング会社は、メタンハイドレート開発の向こうにどんな産業像を描いているのか。日揮の研究開発部門を統括する執行役員・保田隆テクノロジーイノベーションセンター本部長(CTO)にインタビューをした。

【山岡】メタンガスをCNGやLNGにして使う発想は、利用の可能性を拡げますね。千代田化工建設と共同で応募した意図とはどのようなものだったのでしょうか。

【保田】メタンハイドレートの開発は長期にわたるものであり、エンジニアリング会社が連携して進めていくべきだと考えました。商業生産に入ったときには、メタンハイドレートを発電燃料ととらえるだけでは、おもしろくない。シェールガス革命のような二次的、三次的な産業発展につなげるにはケミカルや輸送燃料としての可能性を引き出さなくてはなりません。次々とシャットダウンしている石油化学プラントに代わるガス化学産業の開花が求められる。それはとても難しい。難しいからこそ、手始めに千代田化工建設さんと企業の垣根を超えて、一緒にやってみよう、と。洋上でのCNG化やLNG化の技術は確立されており、十分対応できますが、われわれはその先を見ています。可能なら、エネルギー系だけでなく、化学会社、自動車会社などとも大同団結して、技術開発ができれば、と夢見ています。現在、一般社団法人国家ビジョン研究会の「MHプロジェクト委員会」に多くの企業が参集しています。うちもそのメンバーですが、この委員会などが枠組みづくりの基点になるといいですね。

【山岡】JOGMECの委託業務の「概念設計」はいつごろまでにできるのでしょうか。

【保田】これから正式な契約を結んで着手しますが、平成25年度の事業ですので、年度を超えることはないでしょう。

【山岡】メタンを使ったガス化学の勃興は、大変な産業革命を起こすのではないかと期待が膨らみます。現在、北米ではシェールガス革命で、エタンガスからのエチレン製造が加速しています。ただ、エタン分子は炭素原子2個を水素原子6個が囲む(C2H6)構造で、エタンガスを細いチューブのなかに高速で流し、外側で火を燃やせば水素原子2個がとれてエチレンになる。しかし、メタン分子は炭素原子1個を水素原子4個が囲む(CH4)構造ですから、同じことをしても炭素と水素ができるだけ。いわゆるC1化学と呼ばれる別の体系で化合物を合成しなくてはなりませんね。このハードルが非常に高いと聞いています。