――世界はシェールガス革命が進行中だ。出光がとる事業戦略は。
【月岡】シェールガス革命による環境激変はチャンスだ。私自身、昨年からカナダの液化天然ガス(LNG)プロジェクトの取りまとめに走り、短期間で合意に取りつけた。世界第3位のLNG産出国のカナダは、輸出先のアメリカでシェールガス革命が起き、新たな輸出先の開拓を迫られた。日本企業は通常、鉱区権益確保に動くが、われわれは“動脈”のほうに着目した。現状で太平洋岸につながる唯一のパイプラインを持つ現地企業とジョイントを組み、ガスは市場調達する独自モデルを案出した。「人にいわれてやるのが大嫌い」な出光らしい自立的なやり方だ。ほかにもアメリカやオーストラリアで石油販売会社などを買収。浮かび上がるのは環太平洋で製品をトレーディングし、事業を拡大する未来構想だ。その原動力は人の力だ。日章丸事件のように、出光はトップが方向を決めると社員一丸で壁を突き破る。バブル崩壊後、有利子負債が2兆円を超え、大手自動車、流通と共に「2兆円クラブ」と呼ばれながら、出光だけが自力再生したのは、バランスシートに表れない人の力による。方向を示したらブレない。それが舵取りを任された私の使命だ。
1951年生まれ。75年慶応義塾大学法学部卒業、同年出光興産入社。07年執行役員需給部長、09年取締役需給部長、10年常務取締役(兼)常務執行役員経営企画部長、12年取締役副社長を経て、13年より代表取締役社長。
[出身高校]都立九段高校[長く在籍した部門]販売部門[座右の書]中村彰彦『名君の碑』
[座右の銘]「鬼手仏心」「自我作古」[趣味]B級グルメを求めて名所探訪