そこで早速、K社長は主任を呼んで、「君の心配の理由をもっと詳しく聞かせてほしい」と話したところ、連日の猛烈な残業で工員たちが金銭的不満を持っていることを主任が気にしていると知り、「残業代を25%から30%までに上げるから、がんばるよう皆に言ってごらん」と伝えたとのこと。
すると、主任の顔がパッと明るくなり、「ああ、それなら工員たちを説得しやすいです!」と言ったそうです。
つまり、本当は「残業時間を削ってくれ」ではなく、「残業時間はやむなしとして、残業代を上げてくれ」と主任は言いたかったのです。
主任の心配そうな顔をK社長がよく見て感情移入し、自分のイライラをコントロールして質問していれば、解決はもっと早かったのです。
顔の表情や声の調子、姿勢などの「非言語表現」に目を凝らして、総合的に言葉を読み取り、上手に質問して真意を訊き出す。これが大切です。非言語には、真実が表れやすいからです。
「聞いて、聴いて、訊く」作業は、あらゆるビジネスの土台です。人とのさりげない会話の中でも、ビジネスシーンのプレゼンテーションでも、相手の話をよく聞いて、本当の気持ちまで深く正確に聴き取れる人、そして問題を解決するためにきちんと訊ける人。そういう人は人間関係でも仕事でも成功します。優れた経営者など、多くの成功者はこの「傾聴力」を持っています。あのスティーブ・ジョブズの口癖に、こういったものがあります。
「keep going, never settled」(進み続けよ、決して安住してしまってはいけない)
傾聴作業はまさに、
「keep going, listening and asking」(聴いて、訊いて、止まるな)
これが、骨折り損をせずに成功するための基本です。