アスリートの書いた本はあまり読まない。たぐいまれなる才能に恵まれた人の成功譚や人生訓を聞かされてもなあ……と思うからだ。自分の運動音痴からくるやっかみも関係しているのだろう。
そんな私が本書を手に取ったのはタイトルに惹かれたからだが、内容は非常に腑に落ちるものだった。「諦める」の語源は「明らめる」であり、著者はここに、「自分の才能や能力、置かれた状況などを明らかにして理解し、今この瞬間にある自分の姿を悟る」という意味を込める。
陸上男子400メートルハードルの第一人者として長く活躍し、世界選手権のメダル保持者である著者も、最初は多くの若者と同じように100メートルから競技生活を始めた。しかし18歳で決断をし、400メートルハードルに転向する。理由はただ1つ、「勝ちたかったから」。陸上界で最も「勝ちにくい」100メートルを諦め、勝てる見込みのあるマイナー種目にフィールドを移したのだ。
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