認知度を急速に高めた23時のCM
だがこの人気化は、単なる偶然の産物ではない。スタンプに関しては、絵文字を大きくするほうがスマートフォンらしくていいと考え、当初4つのパターンが考案されたという。それらについて、一般ユーザーからの評価を得るために、約30名の女性にオフィスに来てもらい、グループインタビューを行った。その場での自由な会話の中で明らかに彼女たちの「感情が動いた」のが、現行のキャラクターだったというのだ。LINE上でのコミュニケーションは、感情のやりとりと言い換えてもよい。そこで感情を動かし、コミュニケーションが誘発されるキャラなら、これ以上のものはないだろうという判断になった。現在、無料スタンプが344種、1つ170円の有料スタンプを含めるとトータルで8000種以上のスタンプが提供されている。
LINEというアプリを普及させるために、同社ではプロモーション活動も積極的に実施している。意外なことに、伝統的なテレビCMにも注力しているのだ。当初、LINEは、スマートフォン・メッセンジャーとして、メッセージの交換機能しかなかった。スタンプもなければ無料通話もなかったのである。その後、それらの機能が開発され、その優越性や利便性を広めるために、タレントのベッキーを使い、テレビCMを流した。コンテンツとしては、彼女が夜中に1人で、「どうしてうまくいかないのだろう」と友達に電話で嘆き続ける。そして、朝までしゃべると機嫌が直るというストーリーで、いくら長時間しゃべっても、ユーザー間では通話料がタダであることをアピールしている。このCMの放映時間は、かなり限定されていて、23時あたりに集中的に流したという。理由は、ターゲットが女子大生やOLだったからだ。彼女たちが、家に帰ってきて一息つくのはだいたいそれぐらいの時間だと考えたからである。勉強したり、仕事をしたり、遊んだりした後に、何気なくテレビをつけると、「無料通話、無料メール、LINE」というキャッチコピーが流れるのである。このCMにより、「ベッキーのあれ」で、LINEの認知度は急速に高まっていった。