新会長が唱えた日本会議の急務
「愛子天皇待望論」が盛り上がりを見せる中、それを阻止する「ラスボス」が現れた。ラスボスとは、コンピュータゲームなどの最終局面で出現する最強の敵のことである。
そのラスボスとは、日本会議のことであり、その新会長となった谷口智彦氏のことである。日本会議のサイトを見ると、7月18日に、谷口氏による「会長就任のご挨拶」が掲載されているが、その中で、高浜虚子の「去年今年貫く棒の如きもの」という句にふれ、日本会議の使命とは、貫く棒、日本の心棒を折らずに後代に継承し、日本の国柄を守って、それをさらに強化していくことにあると述べている。国柄とは現代の言い方だが、戦前であれば天皇を中心とした政治体制である「国体」のはずである。
その上で谷口氏は、「旧宮家で皇統を引く男性の方々に皇室へ入っていただく所要の改正は、令和七年通常国会で実現するやに見えたのも束の間、先送りになりました」と述べ、自衛隊に明確な位置づけを与える憲法改正とともに、その二つこそが日本会議の急務だとしている。
つまり、国会で議論された旧宮家を皇族の養子とする案をなんとか実現させることに、日本会議の活動の重点を置くと宣言しているわけである。それは、女性天皇や女系天皇を認めないことにつながっていく。
会長就任までの谷口智彦氏のキャリア
谷口氏は東京大学法学部の出身で、最初は日本朝鮮研究所(現在の現代コリア研究所)に研究員として勤務した。この研究所は、日本共産党の党員が多いことで知られ、その点では、保守の牙城と目される日本会議とは対極にある組織である。ただ、当時の谷口氏の論考に目を通してみると、南北朝鮮との関係についてかなり客観的な立場から論じているように見える。
その後の谷口氏は、東京精密というメーカーを経て、日経BPに勤務し、欧州特派員をつとめた後、外務省に転じて報道官となっている。第2次安倍政権においては内閣官房参与となり、安倍晋三首相のスピーチライターとして活躍した。実は私は、友人を介して、この時代の谷口氏と知り合いになり、その関係は今日にまで続いている。
そのこともあり、谷口氏の会長就任には驚いたのだが、日本会議では、前会長の政治学者、田久保忠衛氏が昨年1月に90歳で亡くなった後、会長が空席になっていた。谷口氏は、安倍元首相が銃弾に倒れた後、日本会議の都道府県本部や支部で講演を行い、機関誌である『日本の息吹』にも精力的に寄稿していたようで、そうしたことが会長就任に結びついたらしい。

