「学校に行きたくない」と語る子どもたちは、どんな悩みを抱えているのか。医師で、信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授の本田秀夫さんは「不登校の子どものなかには、発達障害を抱えている場合もある。そうした児童は自分たちの努力だけで状況を改善するのが難しいため、周囲が環境を調整してあげる必要がある。なかには『勉強が得意だからこそ学校が嫌いになる』というケースもある」という――。(第5回)
※本稿は本田秀夫『発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全』(バトン社)の一部を再編集したものです。
発達障害児の不登校は環境調整が不可欠
Q.本当に学校を休ませて大丈夫?
発達障害の子が不登校になるときには本人の努力だけではどうしようもない問題もあり、学校側との相談、そして環境調整が必要になります。
しかし、環境的な要因があることがわかっても、「本当にこのまま休んでいて大丈夫なのか」「やっぱり登校したほうがいいのでは」と考える人もいます。そういう人は「ここで休んだら、中学(高校)にも行けなくなりそう」「学校に行けないようでは、この先、社会の荒波に耐えられない」と考えて、子どもが環境的な要因を乗り越えられるように、背中を押そうとすることがあります。
しかし、子どもの背中を押そうと考える人は、発達障害の子も頑張って学校に行く→努力して厳しい環境を乗り越えていく→ほかの子どもたちと同じように進学して、社会に出る→福祉の援助を受けずに働いたり、家庭を持ったりできる……という前提で話しているのかもしれません。
私は、そう考える人たちは、発達障害を甘く見ていると思います。発達障害の子が通常学級で一定の配慮を受けながら、授業にしっかり参加できていることもあります。進学して就職し、家庭を持つ人も、もちろんいます。しかしその一方で、発達障害の子は、たとえIQが高くて勉強ができるとしても、どこかの段階で生活がうまくいかなくなり、福祉の対象となる可能性があるのです。

