トランプ政権、地政学リスク、中国人の日本移住…激動する世界情勢を展望すれば、日本が大復活するチャンスが見えてくる。

2024年、ドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に返り咲きました。選挙戦を通じて掲げ続けた「MAGA」(Make America Great Again)のスローガンは、アメリカ国民の不満と怒り、そして願望を象徴しています。

一見、彼のやり方は無茶苦茶です。でも、その背景には「疲弊したアメリカ」国民の本心が隠れています。トランプ大統領が民意を動かしているというより、“民意”がトランプ大統領を生み、彼の行動を促している。そう見なすほうが正しいでしょう。

では、アメリカ国民の“民意”とは何か。それは一口で言えば「国際秩序のリーダー・ポジションからの離脱」です。第二次大戦後の荒廃した世界に、新秩序と経済的繁栄をもたらしてきたと自負するアメリカですが、気づけば国内産業は空洞化し、膨大な貧困層が生まれていた。自動車産業は日本や韓国に奪われ、テック企業やエンターテインメント業界でも外国人が活躍。肝心のアメリカ労働者がないがしろにされている……。事実はどうあれ、これがアメリカ中間層以下の白人労働者たちの“本音”だからです。

各国がトランプ大統領の次の一手に戦々恐々としていますが、彼を生み出したのが“民意”である以上、最終的には落ち着くべきところに着地するというのが私の考えです。例えば中国にかけた145%もの報復課税も結局は30%に落ち着きました。イギリスとの交渉も両者合意に達しました。変化は望むが、極端すぎる変化は望まない。それが今のアメリカ国民の本音です。

もちろん、トランプ氏の暴走を懸念する声も高まっています。本来、関税政策は議会で決定されるべきもの。それがなぜ大統領の意のままになっているのか。それは過去に制定された法律で、「国家安全保障上の脅威」がある場合や国家緊急事態を宣言したうえで用いる「国際緊急経済権限法(IEEPA)」の下で大統領が関税を課すことができると定められているからです。

でも本当にいまアメリカは「国家安全保障上の脅威」や経済の緊急事態に晒されているのでしょうか。そんな疑問も国内で噴出し、企業や州による訴訟も起きています。上院では大統領の関税権限を制限するための法案「トレードレビューアクト2025」も提出されました。可決されれば、大統領が決めた関税も議会が60日以内に承認しなければ、発動できません。

ただし、現時点では上下両院を共和党が制しており、いわば“トリプルレッド”ですので上下両院の通過は見込めません。しかし、26年11月の中間選挙で敗北すれば風向きは大きく変わります。アメリカの政治制度では立法府が予算決定権を握っているため、今後トランプ氏が何かを決めても、予算がつかなければ事態は動きません。トランプ政権の真価が問われる瞬間、国民のジャッジが下されるのは、まさにこの中間選挙なのです。

では「トランプ後」はどうでしょう。目下、最有力候補はオハイオ州選出の副大統領、J・D・ヴァンス氏です。私も先日アメリカの知人らと話しましたが、ヴァンス氏への注目度は非常に高まっていると感じました。

当初彼が注目を浴びたのは、ある一冊の本がきっかけでした。彼の半生を綴った『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)です。暴力、薬物依存、貧困に蝕まれた中西部の家庭から、米海兵隊、イェール大学ロースクール、そしてベンチャーキャピタル企業の社長へ。堂々たる「アメリカンドリーム」の体現者でありながら、「ラストベルト」に生きる労働者たちの苦しみを知っている。まさにトランプ氏の支持者層、「苦境にあえぐアメリカ中西部の白人労働者階層」の惨状を語る者として、一躍脚光を浴びたのです。

「恐ろしいほど賢い人」「何者にもなれる男」…

ヴァンス氏はその後、22年にオハイオ州の上院選に名乗りを上げました。その際、彼を後押ししたのがトランプ氏でした。実はヴァンス氏は当初トランプ氏を毛嫌いし、公然と批判していました。しかし援助を受けた後は熱烈な支持者に転じ、24年7月には、トランプ氏により副大統領候補に指名されました。40歳のヴァンス氏は、「アメリカ・ファースト」の理念を強く訴え、国内製造業の復活や労働者階級の支援、中国に対する強硬姿勢などで、トランプ氏と「MAGA」を体現する存在となっています。

(構成=三浦愛美 写真=時事通信フォト)