日本の医療にはどのような問題があるのか。医師の和田秀樹さんは「日本の医療は、患者のための医療になっていない。その原因は医学部の入試制度にある」という――。

※本稿は、和田秀樹『幸齢党宣言』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

先生と対談する女子高生
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日本の医学教育の問題点

こころの医療が日本でうまく普及しないのも、臓器別診療が50年以上も続けられ総合診療医の育成がうまくいかないのも、わが国の医学教育が悪いためだと私は考えています。

昔から問題にされているのは、研究重視、臨床軽視という傾向です。

大学医学部の教授選考において、臨床能力が優れた人より、論文をたくさん書いてきた先生が選ばれるため、若い医師たちは研究室にこもって、臨床をバカにするようになるのが大学医学部の問題であると以前から指摘されていたのです。

現在の上皇陛下が心臓のバイパス手術を受ける際に、東大病院に入院したのに、順天堂大学の天野あつし教授が執刀して話題になりました。

東大医学部が、研究業績で教授を決めていたのに対し、順天堂大学の医学部は腕のいい天野教授を引き抜いていたため、当時の皇室医務主管が腕の良しあしを比べて、天野先生にお願いしたからとされています。

このように、一般に国立大学では研究業績で教授を決めるのですが、私立大学では学校経営(附属病院の経営)のため、臨床能力で教授を決めることは増えています。

私も臨床能力に優れた教授が選ばれるほうが、医師育成のために望ましいとは思っていますが、アメリカ留学の経験からいうと、それだけでは足りないと考えています。

アメリカでは教授の多くが、教育がうまいということで選ばれます。

私も留学時に教えるのがうまい先生に学ぶことができたので、その後の臨床に自信をもつことができましたし、わかりやすい心のケアの方法などの本を書くことができるようになりました。

やはり教え上手な教授を増やしていかないと、いい医師が養成されない気がします。

それ以上に望みたいのは、入試の改革です。

実は、全国82の大学医学部すべてで、入試面接が行われています。

昔は入試面接で、たとえば寄付が多い受験生については点数を上げるということが行われ、不正入試の温床になっていました。

現在はそれが原則禁止され、医学部に入ってはいけない人を落とすための入試面接が行われています。

勉強だけできて、コミュニケーション能力が欠如した人を医師にしないためとか、医学部を出たのに医者になる気がない人を落とすためということになっています。

ただ、いくつかの点で、これが日本の医療の将来に悪い影響を与えると私は考えています。