かつてなら、ここで必要とされたのは「エキスパート」人材であった。10年前の変革期にはアナログからデジタルへ、銅線から光ファイバーへと、技術基盤が大きく変化した。その新しい技術に通暁したエキスパートである。

ところが今回の変革では、先端の技術は必要であっても、さらにその上に新しいサービスが乗ってはじめて形になる。「エキスパートである」というだけでは、仕事を十分に牽引できないおそれがあるのだ。したがって、ダイナミックであることが大事になる。

一方、いつの時代にも変わらず必要であるのがチャレンジ精神だ。自分の中に1つの疑問がきざしたら、1種類の解釈、1種類の解答によって素直に納得するのではなく、さらに重ねて、4度でも5度でも「なぜなんだ?」「なぜなんだ?」と問い続けることが大事である。私はその姿勢をこそチャレンジ精神と呼びたい。

言葉を換えれば、世の中のあらゆる事象に興味を持つということだ。1つの工程を手がけていても、最近は川上や川下の工程すべてに関わるような仕事が増えている。すると、与えられたパーツだけを突き詰めていくのではなく、全体に目配りした仕事ぶりが必要になる。逆に全体を見ることができなければ、それ以上の成長は望めないといえるだろう。

3つ目は「ミッション」だ。いま日本の企業は当然のように公共心のもとで事業活動を進めているが、そんな中でも、インフラ企業であるNTTグループの社員は、とりわけ強く公共的な使命(ミッション)を意識しながら行動しなければならない。このことを大切にしなければいけないと思っている。

われわれのミッションとは、人と人とのコミュニケーションを媒介するということだ。ひらたくいえば、人と人とを「つなぐ」こと。2011年は、東日本大震災や西日本を襲った大型台風など、心構えの真価を問われる事態が連発した年だった。