※本稿は、荒木博行『努力の地図』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
努力には「4つの定義」がある
多くの行為を組み合わせた努力が必要と言っても、私たちはレイヤーの異なる多種多様な頑張りをマルっとひとまとめにして努力というひと言で片付けてしまう。本来はもう少し努力を分解して丁寧に語るべきだが、そもそも私たちは努力に関する共通言語を持っていない。
たいていの「努力しているorしていない」という議論がすれ違うのは、そもそもどのレイヤーの努力を語っているかがずれているからだ。
そのため、ここからは努力の種類を切り分けていきたい。より具体的な努力から順番に「量の努力」「質の努力」「設計の努力」「選択の努力」の4つに定義・分類して解説していく。
バットを1000回振り続けたイチロー
①量の努力
最初の努力のパターンは、目標達成のために決めたことを繰り返し、回数を重ねてやり切る行為だ。目標達成の手段を「筋トレ」と定めたのであれば、それを反復的に決めた量だけしっかりやり切ることに力を注ぐ。この類の努力を「量の努力」と呼ぶことにする。私たちが努力を語る際、「量の努力」を念頭に語ることが多いはずだ。
イチローは、2004年にメジャーリーグのシーズン最多安打記録を更新した際の記者会見で、次のようにコメントを残している。
イチローの成功を語るうえで、「量の努力」を欠かすことはできない。彼は小学生の頃から毎日500〜1000スイングを繰り返していたと言われている。
この習慣は彼の父親とともに始めたもので、この反復が大記録となる基礎を築いたことは皆の知るところだろう。
何かを達成するためには、とにかく小さなことをコツコツ積み重ねていくことの重要性は言うまでもない。大事なことはどれくらいの量をこなしたか、どれくらいの時間を費やしてきたかだ。このような「量の努力」のエピソードに共感する人は多いはずだ。

