年齢を重ねても健康な人は、何が違うのか。フィジカルトレーナーの清水忍さんは「健康な人は“歩き方”や“姿勢”が全く違う。日常での体の使い方の差が、そこに表れるからだ。意識的に見直していけば、身体機能のパフォーマンスもあがっていくだろう」という――。

※本稿は、清水忍『60歳で最高の体調』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

田舎道を歩く男性の足元
写真=iStock.com/Jcomp
※写真はイメージです

「歩き方」にコンディションが表れる

フィジカルコーチとして多くの人の身体を見てきた私は、クライアントと初めて会うとき、最初に歩き方に注目します。なぜなら、歩き方を見れば、その人の運動習慣のあるなし、今現在の身体のコンディションがわかるからです。

それも本人が特に意識していない普段の歩き姿にこそ、本質が表れます。そして、中高年から老年期のクライアントの場合、歩き方のなかでも特に「歩幅」に目を向けます。というのも、歩幅はその人の体力を知る上で重要な指標となるからです。

ぜひ街で、駅の構内で、すれ違う人たちの歩き方を観察してみてください。人混みの中でもスタスタと自分のペースで歩いて行き、前方や横からスマホなどを見ながらぶつかってきそうになる人が現れても、さっとよけて、何事もなかったように進むことができる……。こういう人は運動マインドがあり、生活の中で適度に身体を動かしているから体力が維持できています。

一方、周囲に比べて歩くペースが遅く、追い越されてしまっている人。周りの人とすれ違うとき、戸惑ったり、立ち止まったりしてしまう人。こうした人は、年齢に関係なく運動機能が落ちてきてしまっています。そして、歩き方は、その人が周囲に与える印象にも深く関係しています。

老けて見える人は「膝下歩き」

年齢に関係なく周囲に若々しい印象を与える人と、50代なのに老け込んで見えてしまう人。そのイメージの差を分けているのは、歩き方です。年齢よりも老けている人に共通するのが、「膝下歩き」です。

【図表1】膝下歩き
60歳で最高の体調』(祥伝社)より、イラスト=中村知史

これは、靴を引きずるような歩き方。足をほとんど上げず、膝下だけを動かして歩いていく。イメージとしては、膝上あたりをグルッとバンドで括って歩いている状態です。膝から下しか動かせないですよね。これが膝下歩きです。周囲が静かなら、靴と地面がれる音も聞こえてくるはずです。

姿勢は猫背で、前屈かがみ。つま先から着地する傾向があり、歩幅は狭く、ずりずりと歩んでいきます。

なぜそういう歩き方と歩き姿勢になるかというと、それは「片足で立つ時間を極力短くしたい」「余計な力を使わず省エネで歩きたい」という本能的な防衛反応からです。

歩くという動作の本質は、前方への体重移動にあります。踏み込み、片足で身体を支えながら、次の一歩を踏み出し、前方へ体重を移動させ、前進する。その際、かかとから着地した足でぐっと地面を踏み込み、大股で歩くと、片足で体重を支える時間が長くなります。