2025年5月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。歴史部門の第1位は――。
▼第1位 なぜ台湾の人々は親日なのか…現地の歴史教科書に必ず載っている「台湾で最も尊敬される日本人」がやったこと
▼第2位 神絵師として美人画で天下をとったのに、なぜこんなことに…NHK大河で染谷将太が演じる歌麿の悲劇的な最期
▼第3位 万博も、都庁もできるはずだった…JR・私鉄・地下鉄が一つもない「東京都心の一等地」が抱える"悲しい来歴"
▼第4位 息子を「種馬」にして26男27女を作らせる…NHK大河で生田斗真が演じる一橋治済が起こした「徳川家乗っ取り計画」
▼第5位 これで「愛子天皇」は実現できる…専門家が提言「男系男子での皇位継承も同時に確保できる歴史に学ぶ妙案」
台湾人で知らない人はいない日本人の正体
台南の市街地で拾ったタクシーの運転手にその行き先を告げると、彼はこう言って笑った。「私たち台湾人にとって大切な場所ですからね。知らないはずがありませんよ」
水田や果樹園が広がる景色の中を一時間ほど走ると、その「大切な場所」に辿り着いた。その地を「烏山頭ダム」という。このダムとそこから流れ出る農業用水を整備した人物が「台湾で最も尊敬される日本人」と称される八田與一である。
台湾の教科書には彼の功績が写真入りで大きく掲載されている。明治19(1886)年2月21日、石川県河北郡花園村(現・金沢市今町)で生まれた八田は、第四高等学校を経て東京帝国大学(現・東京大学)に入学。工学部土木科で最新の工学知識を学んだ。卒業後、八田は台湾に渡った。総督府の土木局に勤務するためである。
日本が台湾の開発に注力していく中、八田は南部の嘉南平野における灌漑工事を任された。当時の嘉南平野は、深刻な干魃が繰り返される不毛の土地であった。農民たちは慢性的な水不足に悩まされながら、貧しい生活を送っていた。逆に雨季には洪水が発生する時もあり、治水事業はこの地にとって大きな課題であった。
