改善傾向。それでも深刻な後継者不足

「後継者不在が中小企業の大きな課題である」というニュースを耳にされたことがあるでしょうか。会社を経営されている方の中には、まさに現在その問題に直面しているという方もいらっしゃるかもしれません。

握手をするビジネスマン
写真=iStock.com/Atstock Productions
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帝国データバンクの調査によれば、2024年時点で「後継者がいない」と回答した企業の割合は52.1%にも上ります。これは一見すると非常に高い数字に思えますが、20年ごろまで後継者不在率は60%超という時期が長く続いていたことを考えると、かなり改善されてきているといえます。

後継者不在率がピークを迎えた17年ごろからこの問題が深刻にとらえられた結果、各都道府県に配置された事業承継・引継ぎ支援センターや、中小企業庁などによるサポート体制の拡充などが行われ、中小企業の後継者が既存の経営資源を活かした新規事業アイデアを発表するイベント「アトツギ甲子園」なども開催されるようになりました。経営者の中にも「いずれ事業を譲らなければならない」という意識が高まりつつある結果が、この数字に表れているのではないでしょうか。

また、経営者の年齢層が上がっていることも指摘されますが、最近は健康寿命が長くなり、60代でも気力と体力が十分な方は珍しくありません。「後継者がいないから、仕方なく社長が長く続けている」というわけではなく、「元気だからこそ社長を続けている」というケースもあるのです。もちろん、長期的にはいつかはバトンを渡さなければならないことに変わりありませんが、「経営者の高齢化が、後継者不足の原因である」と断定はできません。

もっとも、先々会社をたたむつもりがないのなら、いつかは必ず事業承継を行うタイミングがやってきます。当たり前ですが、企業は誰かがトップを担わなければ成り立たないからです。

【図表】現在も半数以上の企業が後継者不在

「無形の資産」を引き継げるか

事業承継の形は大まかに3つに分かれます。1つめは「M&A」と呼ばれる方法で、会社を別の企業や個人に売却するものです。後継者を見つけられない場合でも、自分の代だけで会社を終わらせたくない場合、この手段によって事業を残すことが可能です。ですが、M&Aでは自社の伝統やブランド、地域との結びつきといった、目に見えない資産を引き継ぎにくい場合があり、「何となく会社の空気感が変わってしまった」「地域からの信頼が薄れた」という例も少なくありません。

次に、「第三者承継」という方法です。これは社内の従業員や、あるいは社外から招聘した人材に代表権を持たせる形です。能力のある人物をトップに据えることができるため、オーナーが株主として所有権を持ち続けながら、経営を委託することが可能です。

最後は、古くから日本企業で主流だった「親族承継」、すなわち子息や親族に事業を引き継いでもらう形です。会社が長年守ってきた精神や経営理念などを比較的スムーズに継承できる点が大きな強みといえます。

事業承継は、企業が代々守り築いてきた無形の資産、たとえば創業者精神や地域とのつながりといったものを途絶えさせない工夫をすることが大切です。M&Aが悪いというわけではありませんが、売却によって社内文化が大きく変わってしまうケースも多いうえ、買収後に資産だけを譲渡させて事業を放置したり、借金だけを背負わせるような悪質なケースも増えています。

第三者承継や親族承継を選んだ場合でも、社長の役職を譲っただけで会社がうまく回るわけではないことは言うまでもありません。どれだけ素質のある人材でも、トップとしてのリーダーシップや人を巻き込む力は実際に訓練しないと身につきませんし、業種独特のノウハウや微妙な温度感は、やはり一定の経験が必要です。後継者に十分な経験や知見がない状態でトップに立ってしまうと、周囲をまとめるどころか、取引関係や顧客基盤を失うこともありえます。