現実的な解決策としては、少人数のチームに編成し直してみてはどうだろうか。部下の営業活動を的確に把握しようとすれば、目の行き届く人数は自ずと限られる。優秀なマネジャーでも、せいぜい5~6人が限度。それ以上の部下がいる場合は、5~6人単位のチームに分けて、それぞれのチームリーダーをフォローするといったやり方が最適だろう。
2つ目のポイントは、成功事例の共有だ。種まき型営業への転換を図って、いち早く成果を出した部下がいたとしよう。このとき部下の体験をナレッジ化(知識化)して横展開できる仕組みがある組織は、継続的アプローチの重要性やその方法論が比較的早く定着していく。逆に、ナレッジが個人の中にとどまっている組織は、新しい価値観や方法論がまわりに伝わりにくく、組織レベルではなかなか改革が進んでいかない。
単に仕組みを用意するだけでもダメだ。たとえば成功事例データベースを社内に作っても、ほとんどの営業担当者は数字などの結果を書くだけになってしまう。それは部下がノウハウを独り占めにしようとしているからではない。成功体験を分析して、自分がうまくいった要因を言語化するのには、営業とは別のスキルや経験が必要になる。他の人が参考にできるような形でナレッジを残さないのは、プロセスを分析してナレッジにしていく術がないからなのだ。
その点をフォローするのも営業マネジャーの大事な役割だ。部下からヒアリングをして要因分析をしたり、ナレッジの共有を目的にした会議や勉強会を開くなどして、現場まかせにしない工夫をしたいところだ。
3つ目のポイントとして注目したいのが評価制度だ。種まき型営業の重要性は、部下も頭では理解している。にもかかわらず顧客との関係性より案件に目が行ってしまうのは、目先の案件を追って売り上げをつくらないと評価されない人事評価制度だからだ。
現在の受注額は大きいが拡販余地がない既存客と、いま受注できる額は少ないが将来は大きな拡販余地を期待できる新規顧客がいるとしよう。種まき型営業を目指すなら、攻略すべきターゲットは新規顧客のほうだ。しかし、受注という結果で給与やボーナスが決まる人事評価制度なら、現場の営業担当者は素直に種まき型営業をしようと考えるだろうか?