2025年4月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。ビジネス部門の第2位は――。
▼第1位 「スタバにいる自分」に酔えるからではない…「コスパ最悪」のスタバがいつも超行列・超満席である納得の理由
▼第2位 なぜ「普通の2倍も高いシャンプー」が大ヒットしたのか…「アジエンスの失速」から学んだ花王がCMをやめたワケ
▼第3位 だから任天堂は日本人のために「Switch 2」を2万円安くした…「外国人転売ヤーの撲滅」だけではない本当の理由
▼第4位 イオンが攻め込んでもびくともしない…滋賀のローカルスーパー「平和堂」の尋常ではないサービス内容
▼第5位 丸亀製麺に次ぐ宝の山になるかもしれない…トリドールが展開のハワイアンカフェ"コナズ珈琲"急成長の理由
美容商品とは思えない謎のパッケージ
「メリット」や「エッセンシャル」といった中価格帯のヘアケアには強いが、“ハイプレミアム”の商品(シャンプー価格が1400円以上)には弱かった花王。
その会社が出した「ジアンサー(THE ANSWER)」という商品が売れている。
「2024年11月2日の発売以来、4カ月半でシャンプーとトリートメントの累計出荷本数50万本(※)を突破し、当初計画の2倍の売り上げとなっています。ちなみに購買層は90%が女性です」(同社)
※2024年11月2日~2025年3月21日までに出荷された本体と詰め替えの総数量(花王調べ)
シャンプーのメーカー希望小売価格は400mlで1760円(税込、以下同)で、「エッセンシャル」ベーシックシリーズ(450mlで770円)の2倍以上。大手ドラッグストア「ウエルシア」など一部の小売店や同社の公式サイトで先行販売し、4月末から取扱店を約2倍にする予定。現在の状況での取扱店拡大で販売本数100万本を視野に入れている。
筆者が取材前の4月上旬に都内のウエルシアを視察した際には、1回分のシャンプー+トリートメントのトライアル商品(ピロー=小袋タイプ)も143円で販売されていた。
シャンプー以外に髪の悩みに合わせたトリートメント、オイルやウォーターセラムもあるが、いずれのパッケージも白×シルバーで表面は英語中心。レーザーチャートという五角形の分析図もつく、ヘアケアらしからぬ不思議なデザインだ。
なぜ、このような商品を開発したのか。同社に取材した。
ゴシゴシ洗うのではなく、「塗る」シャンプー
「『ジアンサー』は、花王のヘアケア事業変革の新ブランド第2弾として開発した商品です。第1弾として2024年春に発売した『メルト(melt)』も好調ですが、『ジアンサー』も加わり、ハイプレミアム市場における花王の存在感を高めていきます」
ブランドマネージャー(花王 ヘルス&ビューティケア事業部門 ヘアケア事業部)の野原聡氏はこう話す(以下、発言は同氏)。ブランド名は「花王100年のヘアケア研究からたどりついた答え“アンサー”からつけた」そうだ。
少し専門的な話になるが、髪は約80~90%がタンパク質、約1~8%が脂質、残りは水分やメラニン色素などで構成されているという。
「当社では、美しい髪に必要な条件を『うるおい・まとまり・ツヤ・なめらかさ・しなやか』と定義。それらに必要不可欠なタンパク質と脂質にアプローチする視点で、美髪5大必須成分(補修)を配合しました。中身に正直でありたいと、パッケージのレーザーチャートにはそれを示しました。
またシャンプーは美容液のようなとろりとしたテクスチャーで、ケア成分を含んだ泡を髪全体に行き渡らせる“塗り洗い”をおすすめしています」
今回のプロジェクトメンバーは、事業部以外に商品開発、ヘアケア研究所、容器包装の研究所、パッケージ作成部、広告作成部、PR部、販売など。これに社外関係者も加わった。
食品に含まれる5大栄養素のように、美髪を定義づけたことで商品開発の軸足が定まったが、ヘアケアの答え“アンサー”を成分で実現するのはハードルが高かったという。


