タバコの恐るべき洗脳システム

「君、社長がお呼びだぞ」

上司からこう声をかけられたら、どうだろうか。喫煙者なら、喫煙ルームに駆け込んで一服することだろう。タバコはストレス解消の万能薬。1本吸えば落ち着きを取り戻せる。では、非喫煙者はどうか。彼らはタバコを吸わずに、どうやって気持ちを落ち着けるのだろうか。

こうした、ストレスを浴びた瞬間の喫煙者と非喫煙者の行動の差に、楽な禁煙のヒントがあると言うのは、禁煙セミナー.comを主宰する山崎裕介氏だ。

「非喫煙者はタバコを吸わずにストレスを乗り越えますが、喫煙者はタバコを吸わずにはいられません。このように彼らは、タバコはストレスを解消してくれる戦友だと思っていますが、実は、ストレスを生み出しているのはタバコ自身です」

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これに気づけば禁煙できる!喫煙者の「3大勘違い」

タバコが、ストレスの原因とは?

「喫煙者は一定時間タバコを吸わないと、イライラしてきますね。タバコを吸うとこの不快感が瞬時に解消されるので、タバコはあらゆるストレスを解消してくれる素晴らしいものだと思い込んでしまう。しかし、イライラするのはそもそもニコチン切れのせいであり、これはタバコ自体がつくり出しているもの。この仕組みに気づけば、禁煙は簡単なのです」

こうした、「気づき」を重視する禁煙法を「リセット禁煙」と呼ぶ。吸いたい欲求を抑えつけるのではなく、気づきによって吸いたい欲求自体をなくしてしまう。だから、成功率が高いとされる。

山崎氏の試算によれば、20歳から70歳までの50年間タバコを吸い続けた場合、タバコ代とタバコを吸うことによって生じる諸費用(医療費やコーヒーなどの嗜好品費)の総額は、1600万円前後になる。タバコがつくり出したストレスをタバコで解消するためにこれだけの出費をしていると思うと馬鹿馬鹿しいが、それでもタバコを手放すのは辛い、いや怖い。これは喫煙者にしかわからない心理だと思うが、禁煙するのはとても不安で、恐ろしいことなのだ。