大破局を招き寄せた「安全神話」というウソ

結果、内外のチェック機能は麻痺していった。最も肝心な原子力安全委員会や原子力安全・保安院(ともに現・原子力規制委員会)は、福島原発事故をめぐる国会事故調の言葉を借りれば、電力会社の「虜」に堕した。メディアも取り込まれ、キャスターや評論家を自称する連中が嬉々としてCMに出演し、「安全神話」の宣伝に一役買った。それでも批判する者に対しては、時に高圧的な抗議を繰り広げる。私も経験があるのだが、原発絡みの批判的な論評は、電力会社がすべてをこと細かに記録して片言隻句に文句をつけてくるから心底辟易し、疲弊させられてしまう。ヒトとカネに余裕のある大企業だからこそ成せる業である。

圧倒的なパワーを背景にチェック機能を麻痺させ、あり得るはずのない「安全神話」の喧伝に躍起となった電力会社が不祥事やトラブルの隠蔽に走るのは必然だろう。それでも完全な隠蔽などできるはずもなく、2000年以降だけでも、次のような事例が漏れ出ている(共同通信のまとめなどによる)。

▼2002年
福島第一と第二、柏崎刈羽の各原発(いずれも東電)で炉心隔壁のひび割れなど29件のトラブル隠蔽が発覚
▼2004年
福島第一原発で試験データの偽造が発覚
▼2006年
柏崎刈羽原発で海水温度のデータ改竄が発覚
福島第一、女川(東北電)、敦賀(日本原電)、大飯(関電)の各原発でも海水温度のデータ改竄が発覚
▼2007年
柏崎刈羽原発で緊急炉心冷却装置関連の故障隠しが発覚
福島第二、柏崎刈羽、女川の各原発で原子炉の緊急停止などの隠蔽が発覚
志賀原発(北陸電)で、定期検査中に制御棒が抜けて起きた臨界事故の隠蔽が発覚

毎年のように繰り返し発覚する隠蔽、偽造、改竄。普通の企業なら消費者にそっぽを向かれて潰れてしまいかねないが、地域独占かつ競争相手のいない電力会社は絶対に潰れない。だから懲りずに隠し、ごまかし、嘘をつく。