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図7:数理モデルをマーケティングに活かすための「7つのポイント」

商品やサービスの場合、類似の成功例を他社に求めても「ヒット現象の数理モデル」分析に使えるほど詳細なデータを取得するのは困難でしょう。類似の成功例は社内で探すのが適当です。とはいえ、たとえば公共のイベントなら必ず公の報告書から情報が集められるし、公共のイベントでなくても決算報告書などIR情報として公開された資料から、案外入手できるものです。

実施した施策の費用などに関して公開された情報は少ないでしょうから、データの取得には少し知恵が必要です。私たちが映画でシミュレーションをした際、広告については広告出稿費か、あるいはGRPのどちらかのデータを電通広告統計から取得して、数式に代入しています。

データを集めたら、それを数式に代入して「ヒット現象の数理モデル」を用いたシミュレーション計算ができるようになります。それを実際の販売数や参加者数の推移とフィットするように調整すれば、「宣伝・報道」「直接コミュニケーション」「間接コミュニケーション」などの各パラメータ(係数)を特定することができます。

方程式ではパラメータが決まらないと答えを出せません。私たちが「ヒット現象の数理モデル」でこれまでに多くの映画の分析を積み重ねてきたのは、映画のヒット現象に寄与するパラメータの値を特定するためです。映画にもさまざまなタイプの作品があり、作品によって適正なパラメータ値は変わってくる。1つの映画でパラメータを特定すれば、それを応用して同じようなタイプの映画に利用できます。

パラメータを特定して初めて方程式は使えるものになります。類似の成功例を分析するのは、そのパラメータを探り、暫定的に「ヒット現象の数理モデル」分析の方程式をつくるためです。自分が担当する商品やイベントと比較するための基準をつくるのです。