暫定的な「ヒット現象の数理モデル」分析方程式から、自分が成功させたい商品やイベントの成功イメージをシミュレーションします。目標販売数、目標動員数、目標売上金額といったゴールのイメージを数字で設定して、それとシミュレーションの結果がフィットするようにすべてのパラメータを設定します。
商品の販売が開始されたり、イベントが始まったりしたら、販売数や参加人数、売り上げなどの数値と、シミュレーションした数値を比較します。販売実数(参加人数、売り上げ等)の推移については、全体的には類似の成功例と同じ傾向になると予想されるので、最終的な結果も予測できるのです。シミュレーションどおりにいっていない場合は施策のてこ入れが必要ですから、そのためにも日々の実績は追っていきましょう。
日々の変化を追うことで、販売前のキャンペーンや販売後に打った施策が、販売数や参加人数にどれくらい影響を与えたかを見極めてください。特に何らかの施策を行った際に、ブログ等のソーシャルメディアにどのくらい書き込まれたかは、その後の施策を考えるにあたって最も注意して見ておかなくてはならないポイントです。
ブログの書き込み件数の変化を観測し、その施策が商品の販売数やイベントの参加者に与えた影響を把握して、その結果得られたデータからより有効なマーケティング施策を見極め、そこに絞り込んで実行していくのです。
以上が「ヒット現象の数理モデル」をビジネスに活用するときの大まかな流れです。「ヒット現象の数理モデル」によって得られたシミュレーションをもとに、常に最適な状況をつくり出して商品の販売促進を行ったり、イベントを成功に導く――。そのノウハウは、「ヒット現象の数理モデル」による一般化された数理モデルの係数=パラメータとして組織に残ります。
これはある商品やイベントを成功させるためのガイドラインですが、実は変化に応じて変えていくという施策の打ち方そのものがノウハウとして得られます。それを組織に蓄積することで、次回以降「ヒット現象の数理モデル」を使ってさらに成功の確率を高めることができるのです。
1957年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。理学博士。2008年より科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業研究員。デジタルハリウッド大学ヒットコンテンツ研究室客員研究員。専門は計算物理学手法を用いた表面科学。
ヒットコンテンツ研究所社長 吉田就彦(写真左)
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒。キャニオンレコード(現ポニーキャニオン)に入社し、「だんご3兄弟」等数々のヒットを手がける。デジタルガレージ副社長を経て現職。デジタルハリウッド大学院教授、コンテンツ学会理事等も兼務。