厚労省まとめより「深刻な結果」が出た調査

他方で、病院間の収支報告を取りまとめている病院団体の実態調査によると、厚生労働省が取りまとめたこの資料や厚生労働省訪日外国人受診者医療費未払情報事務局で整理された内容よりも、3倍以上の外国人患者と見られる人物による医療費の踏み倒しによる貸し倒れ引き当てが計上されており、日本全国で病床数200床以上の基幹病院35カ所で22年度に未払いとなっている医療費は窓口ベースで平均2億2000万円程度となっています。これは、ほとんどが入院患者であり、国保加入かどうかもわかりませんから高額療養費制度で減免された金額が踏み倒されているだけでなく、あらゆる支払いから逃げている可能性も否定できません。

正確なところがわからないのに、国会でそれっぽい資料が出て何となく「外国人の医療費問題は全体からすればたいしたことがない」という雰囲気で流れてしまったのは問題です。保険局・医政局だけでなく、財務省や各病院団体、日本医師会以下各団体も総出で実態の把握に乗り出さなければならない事態ではないのかと思います。

これらのデータから、少なくとも確実に問題と見られる在留外国人の国保未納問題と、医療機関における外国人患者の未払い問題は密接に関連していることがわかります。新宿区や板橋区のデータが示すように、特定の国籍に未納が集中している傾向も見られ、国保制度を組織的に悪用している可能性も指摘されています。

病院の廊下を歩くぼやけた人
写真=iStock.com/hxdbzxy
※写真はイメージです

外国人の国保による高額療養費は妥当なのか

外国人による国民健康保険の未納問題が深刻化する中、高額療養費の問題も議論されています。先日、在留外国人の国民健康保険加入による高額療養費問題が話題になりました。もともとは、外国人に対する医療費の問題について医療政策に詳しい自由民主党の自見はなこさんが問題提起しており、3カ月日本に滞在する外国人に対しては国保加入を義務付ける方向で政策実現していました。そこへ、ネットで国民民主党の玉木雄一郎さんが改めて外国人の医療費問題を話題にし、国会でも一部論戦になるなど、話題になりました。

推計のうえに推計を重ねるのは好ましくありませんが、現状の数字をそのままスケールさせると、おそらく年間で踏み倒された国民健康保険の未納額と、受診したにもかかわらず窓口で支払われず医療機関側が入金を受けられなかった金額の合計はおよそ年間4450億円から6800億円のあいだぐらいではないかと推計されます。