「組織的な悪用」が疑われるケースも
特定の国籍に未納が集中している傾向も見られ、自治体担当職員からは特定飲食業(カレー屋など)に滞納者が多いという肌感覚が報告されており、国民健康保険制度を組織的に悪用している胴元の存在も疑われています。国保未納の状態になっている在留外国人が特定の事業所に勤めていたり、同じ入国ブローカーによって滞在したりしている者が多いという特徴も見られ、国保の仕組みについてある程度知識を持っていることも指摘されています。
高額療養費の問題と国保未納の問題は、同じ構造的問題の異なる側面と言えます。在留外国人が国民健康保険に加入し、高額医療を受けることそのものは制度上の権利ですが、保険料を納めないまま医療サービスだけを受けるという「タダ乗り」が行われているとすれば、それは制度の持続可能性を脅かす重大な問題です。保険料を納付している外国人による高額療養費の利用は問題ではありませんが、未納者による制度悪用は厳しく対処する必要があります。
来る参院選に向けて、しかるべき議論が必要
在留外国人による国民健康保険料の未納問題は、自治体財政に大きな負担をかけるだけでなく、日本の医療制度全体の持続可能性に関わる重要な課題です。国籍によっては8割以上が未納となっている実態は、単なる経済的困窮だけでは説明できず、制度的な対応が必要です。これらの未納額と医療機関での踏み倒し額を合わせると、年間4000億円を超える負担が生じていると推計され、すべて日本国民の税金で補填されている状況です。
もちろん、日本人の国保未払いも問題と言えば問題ですし、目下の日本経済の閉塞感はこれらの社会保険料の支払いが可処分所得を大きく減らしてしまっているので、医療費を中心に歯止めをかけ、手取りを増やす政策にもっていかなければなりません。ただ、外国人の医療問題は日本人の国保未納や生活保護の問題とは別に、きちんと切り分けて政策的な対応をしなければならない事案ですから、今国会だけでなく参院選に向けてしかるべき議論を積み重ねていくべきではないのかと思います。
ともに暮らしていくために…
これは、とりもなおさず旧民主党政権の野田佳彦さんと、当時野党であった安倍晋三さんおよび公明党代表・山口那津男さんとの三党合意で進められる予定であった「社会保障と税の一体改革」の中で、取り組みが行われる政策でした。結果的に、長期にわたった安倍晋三政権ではこれらの改革に着手されることはなく現在に至っています。制度的に、これからも多く日本に入ってくる外国人を社会保障政策のどこに位置付け、ともに暮らしていくためにどのような保障の体系であるべきかは、やはり大きな未来予想図が必要です。それに向けて着実に政策実現をしていくための議論が必要なのではないかと思います。
いや、先に自治体が医療費負担や生活保護で財源不足に陥ってどんどん倒れていき、また、医療機関も地域での収支では支えられなくなっていく途上で、外国人の国保未納問題にまでいままで手が回っていなかっただけだと言われれば、それまでなんですけどね。