財政的に厳しい自治体では、実態把握が困難

新宿区では国保特別会計の財政状況が厳しく、外国人問題を抜きにしても財政的に困難な状況にあります。新宿区議会での質問によれば、単身外国人世帯と世帯主が外国人の世帯では、賦課額20億円に対し納付額は8億7000万円にとどまり、納付率はわずか44%、未済額は11億3000万円(56%)に達しているとされています。新宿区はまだ東京都の特別区であり、人口も企業も多いので税収的には何とかなりますが、問題は地域で外国人を千人単位受け入れている山間部などの零細自治体や、外国人が集住している自治体です。

埼玉県のある自治体においては、これらの国保未払いによる自治体への財政負担が全歳入の6%、約19億円(23年度)に上るとの報告も出ています。ただし、これらの国保未納が外国人によってどのくらい占められているかは不明です。また、高齢者による生活保護世帯もこれらの国保未納世帯に加えられることから、外国人比率だけでなく貧困に陥っている高齢世帯の割合が高ければ同様に国保未納による法定外繰入金を自治体は強いられることになります。

新宿区では「滞納対策課」を新設

国保未納の対策として、東京出入国在留管理局は地方入管と自治体が情報を共有し、納付を促進する制度を開始しました。この制度はすでに横浜市、豊島区で実施されています。対象となるのは、納付期限から1年を経過する滞納があり、自治体において滞納処分を尽くしてもなお未納額の回収が不可能な外国人です。ただし、永住者および特別永住者は情報提供対象外とされています。

新宿区では未納の督促のために滞納対策課を2025年4月から新設しましたが、現状では世帯主ごとのソートになるため、例えば世帯主の夫が日本人、妻が外国人となった場合には日本人世帯の未納とカウントされる問題があります。このような世帯単位のカウント方式では、在留外国人個人の国保納付状況を正確に把握することができず、効果的な対策を講じることが難しくなっています。

新宿区役所、2023年2月16日
新宿区役所、2023年2月16日(写真=Asanagi/CC-Zero/Wikimedia Commons