板橋区が分析した驚きのデータ
これまで述べた通り、在留外国人の国民健康保険(国保)未納問題は全国の自治体で深刻化しています。かなりヤバイ状況です。出入国管理庁では、23年以降の外国人による国民健康保険の未納状況の悪化を懸念する要望もあったことから、自治体側と一緒になって東京都板橋区、練馬区、神奈川県横浜市の3自治体・特別区に対し在留外国人の国保未納状況を調査しました。
板橋区のデータを国籍別に分析した結果、ウズベキスタン人86.5%(156世帯中、未納者135世帯)、スリランカ人79.2%(202世帯中、160世帯)、ネパール人70.8%(1646世帯中、1165世帯)という高い未納率が確認されています。母数が多い中国人でも34.3%(6532世帯中、未納者2243世帯)で中国人だけで未納総額が1億1700万円(23年度)に上っています。
これは、あくまで納めるべき国保保険料の未納だけの数字であり、保険証を取得し医療機関で診療を受け、診療報酬として医療機関に払い出されているにもかかわらず大元の市町村国保の側で欠損金を出しているケースはこの数字に含まれない場合があるので、実際には損害がもっと多い可能性もあります。
問題は、これらの外国人国保の未納があると、自治体・市区町村は年度予算から一般会計として全額を法定外繰入金で穴埋めしなければならないことです。つまり、外国人による国保未納はダイレクトに自治体財源から補填されることを意味し、税金で外国人の未納分国保を払っているかたちになります。
そもそも国保の制度を知らない人も多い
このような状況は外国人居住者が多い都市部など一部の地域だけの問題ではなく、観光業の盛んな地域、また、外国人を労働者として多く受け入れている工業地域や農家の多い零細自治体を中心に広がりつつあります。在留3カ月以上の外国人登録の多い群馬県や長野県の一部自治体では、わずか3人の職員で1600人以上の外国人の方の保険料納付状況を精査しなければならない状況に陥っており、しかも地元に住む極めて多くの外国人が国保未納状態で、そもそも国民健康保険制度があることも知らない外国人が多数という割と大変なことになっています。
東京都板橋区、豊島区、神奈川県横浜市で調査が実施できた理由は、単純に「ちゃんと区・市役所が調査を実施できるだけの優秀な職員とマンパワーがあったから」にほかなりません。むしろ、問題となるのは外国人が多く居住する自治体のうち、外国人管理が行き届かない中規模以下の自治体で実態把握が難しくなる点です。