ゲーマーによって「ロボット操作」が広がる可能性
しかし、この新しい職業には課題もあります。仮に1名で1台しか操作できない現状では、生産性向上には限界があります。もちろん、地方など本当に人手が集まらない場合においては、遠隔であっても1名確保できることに意味はあります。
ただし、生産性という意味においては、1名で複数台のロボットを操作する必要があるのです。この課題解決にまですべてを遠隔操作でおこなうのではなく、自動化と手動操作を組み合わせる「Shared Control」と呼ばれる技術が鍵となります。
さらに注目すべき点として、遠隔操作から得られるデータがあります。遠隔操作は遠隔操作だけでとどまらないのです。遠隔操作時に得られるデータの分析によって、人間の判断プロセスや操作方法が明らかになり、それを基にAIが学習して、最終的には完全自動化への道を開くことが可能です。
そして将来的には、遠隔操作によって得られたデータが「操作スキル」として抽象化されることで、まるでスマホでアプリをダウンロードするように他の人がネットからその人たちのロボットにダウンロードして、ロボットの操作スキルを活用するということも考えられます。
たとえば、優秀なゲーマーがつくり出した操作データを他のオペレーターがダウンロードし、そのロボットにカスタマイズすることで、効率的にロボット操作がおこなえるようになるという未来が見えてきます。
「ゲームスキル」は新しい働き方や産業成長に貢献できる
人の動きをロボットの制御のために活用するという流れはすでに見られます。
テスラ社などでは、人間の日常動作データを収集し、それをもとにヒューマノイドロボットが動作を学習していくということにも取り組んでいます。実際に自分の日常生活の動きデータを提供する仕事の求人もおこなわれています。
このような取り組みは、人間とロボットとの新しい関係のあり方として興味深いものです。これらを踏まえると、一見趣味のように思われるゲームのスキルが、新しい職業や産業の成長に寄与していくことがわかります。
ロボット活用によって生まれる職業や働き方には多くの可能性があります。ロボット技術を活用した自動化や遠隔化の変革期を経れば、スキルアップやキャリア形成の考え方すら変わってしまうかもしれません。
そして、技術が進化するにつれてロボットの遠隔操作という仕事はさらに広がりを見せるでしょう。ゲーマーが同時に10台のロボットを操る世界は、決して遠い話ではないですし、すでに始まっている現実なのです。