<人的犠牲をいとわず受刑者まで動員したツケで、社会の大混乱がプーチン政権を脅かす。兵士たちがどっと帰ってくれば、クレムリンのプロパガンダはもろくも崩れ去る:ブレンダン・コール>
第二次世界大戦での勝利記念日を記念して軍事パレードを行うドネツク人民共和国軍の戦車
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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はナチス・ドイツに対する偉大な勝利から80年目に当たる2025年を「祖国防衛者の年」にすると宣言。

「ウクライナの非ナチ化」のために戦う兵士たちを、祖国を守る英雄として称揚しようとしている。だが皮肉にも、兵士の大量帰還はプーチンの支配を脅かすリスクをはらむ。

累々と横たわる同胞の死体を見てきた兵士たちがどっと帰ってくれば、クレムリンのプロパガンダはもろくも崩れ去り、ロシア社会は大混乱に陥りかねない。

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)によれば、ロシア政府は既にこうしたリスクに気付いて対策を取りつつある。

プーチン政権は戦況を有利にするため人的犠牲をいとわずに人海戦術を続ける一方で、国内では膨大な数の死傷者が出ていることをひた隠しにしてきた。だが兵士たちが戻ってくればもはや事実は隠せない。

市民の怒りが爆発するのは時間の問題だろうと、安全保障の専門家は言う。

兵士の帰還は直接的に現体制を脅かすことはないにせよ、ソ連崩壊後の混乱期よりもはるかに深刻な治安の悪化を招きかねないと、反プーチン派のロシア人は本誌に語った。

プーチン政権はウクライナ侵攻後1年たった頃から退役軍人のための支援組織の設置に乗り出した。表向きその目的は帰還兵の社会復帰の支援だが、実際には帰還兵を政権の監視下に置くことだと、ISWは分析している。