タイムアウトマーケットの死角
新しい体験と付加価値を提供するタイムアウトマーケット型のフードコートが広まれば、日本のフードコートはマンネリから脱せられるかもしれません。ただ、この斬新なビジネスモデルにも死角がないわけではありません。
今の日本のフードコートを図表3のようなポジショニングマップに落としてみました。日本のフードコートの大半は左下にポジショニングされます。最近少しずつ増えてきたフードホール(例:東京ドームのFood Stadium Tokyoなど)は従来のものに少しデザイン性が加わっていますが、出店しているテナントは従来と大きくは変わりません。
今回のタイムアウトマーケット大阪はこれまでのフードコートとは完全にポジションを変え、フードホールよりも確実に質の良い付加価値があり、さらにある程度の価格で勝負できる店を取り揃え、フードコートの空白地帯を狙って作っているという点で絶妙なポジションをとっています。
この点では、他の都市のタイムアウトマーケット同様、かなりのお客の支持を得るのではないかと思います。
ただし、出店した立地は大阪であるということを忘れてはいけません。日本一とも言っていい食の街であり、食にうるさいお客が多い街です。飲食店の競争ももっとも激しい街の一つです。
特に、コスパに対して一番うるさい街と言ってもいいのではないでしょうか。どんなに美味しくても価格が高すぎては長続きしないという価格分の価値を重視するカルチャーがあります。
手羽先のから揚げ1本 1500円
プレミアムビフカツカリー3800円、手羽先のから揚げ1本1500円、生ビールMサイズ900円、肉たまきつねうどん2000円、牛骨ラーメン1500円……。
これらは出店されている各店のメニューをランダムに抜粋したものです。いずれも、とても高くて手がでないわけではありませんし、東京の感覚で言うとわりと普通の価格帯ですが、「大阪に食い倒れのフードコートができた」という感覚で行くと、高く感じる方もいるでしょう。
特に大阪の食い倒れの街で食べ歩いている方にリピートしてもらうためには、これから、さまざまな工夫が必要かもしれません。
出店しているテナントも意図的に期間を区切って、定期的に店舗の入れ替えをしていき、来店客の飽きがこないようにすることも必要でしょう。また、店舗ごとの連携や、コラボメニュー、コラボ企画などがあってもいいかもしれません。
質の高いテナントが同じ屋根の下に集まって、統一感のあるデザインで一体化された空間で食を提供するというのは、従来のフードコートとは明らかに異なる価値になっています。
しかしハード面は経年劣化していきます。デザイン面だけでなく、同社が得意としている新たな体験の提供が継続的にできるかどうか。それが来店客に刺さるかどうか。
これからのタイムアウトマーケット大阪の作る「新たな体験価値」に注目したいと思います。