食べたお皿はそのままでいい
記事冒頭では、フードコートへの要望として「清潔さ」をあげる声がありました。この点ではどうでしょうか。
タイムアウトマーケット大阪は、食べたお皿を片付ける必要がありません。
通常、フードコートは片づける場所があり、食べた後にトレーを持っていく形式です。ここには片付け専門のスタッフが巡回していて、お客がテーブルにおいていったトレーやお皿を片付けてくれますので、片付ける場所を探す必要がありません。
共通のタイムアウトマーケットのロゴ付きのお皿を全店で利用するようにするといった細かいサービスも導入しています。お客の負担がなく各社もお皿などをすべて用意する必要がないなどのメリットがあります。これも出店側としては魅力のひとつでしょう。
また従来のフードコートでは店が料理を提供するだけにとどまり、付加価値提案力がないのに対して、フロアにはDJやライブパフォーマンスのできるステージも常設されています。アート展示やワークショップなども継続的に実施される予定です。
上限を迎えたように見えるフードコートの満足度もまだまだ上がる余地がありそうです。
デベロッパーの収益性が高い
既存のフードコートに出店する場合、飲食は家賃比率が高くなるので、「高い家賃を支払えるような飲食店は大手に限定される」という限界点がありました。
一方のタイムアウトマーケットの場合、家賃はそれなりの設定と思われますが、タイムアウト社本体の事業採算性が良いため、出店者にとってさまざまなメリットがあると考えられます。
タイムアウトマーケットの事業性はどうか。タイムアウトマーケット全体の損益は次のようになっています。総収益の127億円という金額は同社全体収益195億円(24年度同社決算数値)の65%を占めます。タイムアウトマーケットはタイムアウト社にとっても基幹事業になってきています。
24年の純収益高は4%程度のマイナスですが、粗利益高とEBITDA(※1)は伸びています。特に調整後EBITDAは日本円換算で22億8600万円と、前年比186%と大きく伸びています。
(※1)EBITDA……国際的な企業の収益力を見る際に使用します。一般的には税引き前利益に減価償却費、支払利息を加えた利益、つまりキャッシュフローがあるかどうかを見る指標として使われます
これはリスボンのような直営店だけでなく、ドバイや南アフリカなどのその国の運営オペレーターとの協業がうまくいっているからだと思われます。(※2)
飲食部門の収益性が高いということは、タイムアウト社として、タイムアウトマーケットの開発にさらに投資できます。
施設環境を整えたり、全体のブランディングに投資してデザイン性をさらに高めたり、また、より質の高い、地域で人気のこだわりの専門店を誘致する際に好条件を提示できます。広告、SNSでの拡散などにもより投資できます。
デベロッパーの収益性が高いということは、よりレベルの高いフードコート開発をすることができるという点で、利用客にも、デベロッパーにも、そして入居する店舗にも大きなメリットがあるのです。
タイムアウトの発表では、2025年の大阪以降も、25年中にバンクーバー、ブダペスト、アブダビ、27年にプラハ、リヤドとさらに5店舗の出店が決定しています。他にも進行案件があるとのことなので、タイムアウトマーケットのビジネスモデルはさらに広がっていきそうです。
(※2)日本での展開は、グラングリーン大阪の商業ゾーン開発担当会社である阪急阪神不動産が、運営会社タイムアウトマーケット大阪(奥土恵代表取締役社長)を設立し、運営オペレーターとなり、日本での展開を進めていく形式。