今年2月の貿易統計は、輸出金額では持ち直し傾向が続くものの、輸出数量は依然として低迷という結果になった。具体的な数字は、金額が前年比2.9%減、数量は15.5%減だったが、これには、前年がうるう年で1日多かったことと、中国の春節休暇が今年は2月になり輸出が下押しされたという特殊要因がある。輸出金額を季節調整値で見れば前月比1.3%増と4カ月連続の増加だ。
この背景を、大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「これはあくまでも為替レートが変動したときに起きる一時的なJカーブ効果。アベノミクスの積極的な金融緩和による円安の影響が輸出数量におよんでくるまでには半年から1年近くかかる。また当面は、LNGなどのエネルギー輸入数量の高止まりから貿易収支が悪化するが、こちらも中長期的にとらえれば、徐々に改善に向かっていく」と説明する。
日本からの輸出の先行きに関しては、海外経済の動向を見ていく必要がある。キプロス危機を抱えるEUだが、基本的にはドイツとフランスがギリシャなどで示してきた強い救済姿勢が、最終局面ではユーロ瓦解を防いでいる。
熊谷氏は「いまのところ統計数字にはマイナス面が目立つけれども、総じて海外のファンダメンタルズは回復している。当面は、アメリカへの輸出に引っ張ってもらい、円安の効果が出るのを待つ。為替相場も、流れは1ドル=100円に向かっており、輸出を担う製造業への追い風になる。その間、政府に期待されるのは財政規律の維持と成長戦略へのテコ入れだ」と話す。
(ライヴ・アート=図版作成)