銀座で約50年間、文壇バー「ザボン」を経営する水口素子ママ。その仕事柄、恋愛の相手はいつも妻帯者だったという。年齢を重ね、商売からの引き際も考える今、ふと思うのは「あのとき結婚していたら」という心残りだ。
もしも結婚していたら別の人生があったはず
丸の内でOLをしていた私が、銀座に足を踏み入れたのは1973年。元棋士の藤沢秀行先生のご紹介で、文壇バー「眉」のホステスとして働き、その後、文壇バー「ザボン」を開いて独立しました。幸いにもお店は賑わい、物件を紹介いただいた丸谷才一先生や、さいとう・たかを先生をはじめ、数多くのお客様に恵まれました。
水口素子(みずぐち・もとこ)
銀座老舗文壇バー「ザボン」ママ。鹿児島県から上京後、商社で役員秘書として勤務。文壇バー「眉」に入店し、5年で独立。著書に『酒と作家と銀座』(大和書房)がある。
銀座老舗文壇バー「ザボン」ママ。鹿児島県から上京後、商社で役員秘書として勤務。文壇バー「眉」に入店し、5年で独立。著書に『酒と作家と銀座』(大和書房)がある。
ザボンには博識で貫禄のある魅力的な男性が集まり、みんな決まって妻帯者でした。粋に夜遊びを嗜む男性は、不思議と家庭も疎かにしないものです。そうした余裕ある姿に惹かれ、私は妻帯者ばかりと恋仲になりました。当時は若く無鉄砲で、不倫や愛人関係でも満足していました。それに銀座で水商売の女といえば、「愛人になれるだけ幸せだ」と言われるほど風当たりも強く、結婚は難しいと悟っていました。
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